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社債の発行と売買(債券業務:その5)


今日は「債券業務」の第5回です。社債の発行と売買について説明します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。この単元には動画がありません。

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1 利付債と割引債

これまで、利子が付く債券を例に説明してきました。利子が付く債券を利付債といいます。

利子が付かない債券もあります。利子が付かない債券に投資する投資者がいるのは、額面金額より安く発行されるためです。たとえば、額面金額100万円の債券が98万円で発行されれば、2万円のもうけが得られます。額面金額より安く発行されることから、利子が付かない債券を割引債といいます。


2 発行条件

債券の額面金額は1億円、100万円などさまざまですが、評価するときには100円に標準化します。発行するときの価格が100円を超えるとき、オーバーパー発行といいます。ちょうど100円であるとき、パー発行といいます。100円を下回るとき、アンダーパー発行といいます。

発行価格が
100円超  → オーバーパー発行
100円   → パー発行
100円未満 → アンダーパー発行

多くの人にとっては、「パーって何?」という感じだと思いますが、ゴルフ⛳️🏌️‍♂️というスポーツを知っている人は聞いたことがある用語だと思います。ゴルフの用語を債券の評価に流用しています。

ゴルフは、小さなボールをホールに入れるスポーツです。ちょうど規定回数でボールをホールに入れるとパーになります。規定回数を超えてしまうとオーバーパーになります。規定回数未満で上がるとアンダーパーになります。


3 発行

債券を発行するとき、多額の資金を本当に集められるか不安があります。その不安を和らげるために、債券をまとめて買い受ける人を引受人といいます。引受人はまとめて購入した債券を小口に分けて投資者へ販売します。

債券の発行者 → 引受人 → 投資者

まとめ買いをする引受人は、債券が売れ残ったり、安値で売らざるを得なくなるリスクにさらされます。リスクを分散するため、大型案件は1人で引き受けず、グループで引き受けます。このグループを引受シンジケート団(引受シ団)といいます。シンジケートとは、複数の引受人が共同で販売するしくみです。引受シ団になれる会社は、発行者によって異なります。

社債等:証券会社だけ
地方債、政府保証債:証券会社、銀行

社債が発行された後、利子の支払いが滞りなく行われるように管理する人を置きます。これを社債管理者といいます。近年は個人投資家向けに発行される社債が増えてきていますので、投資者保護の観点から、社債管理者の役割は重要になってきています。銀行や信託銀行が社債管理者になります。

社債の額面金額(各社債の金額)が1億円以上であるときには、社債管理者を置く必要がありません。額面1億円の社債に投資できるのは巨額の資金を運用するプロだと考えられるからです。


4 経過利子

債券を実際に売買するとき、経過利子というものを考慮しなければなりません。経過利子とは、買い手が売り手に払う利払い日の間の利子です。

少し話が込み入りますので、下の図表で説明します。利払い日の間に債券の受け渡し(売買契約の決済)が行われるとしましょう。受渡日まで保有していた売り手は「ここまで保有してきたのだから、少なくとも次の利払日に払われる利子の一部は自分のものだ」と主張します。買い手は、これに応じて、次の利払日に受け取る利子の一部を売り手に払います。


売り手のわがままにみえますが、売り手の主張を聞き入れないと、売り手は利払いを受けた直後にしか債券を売らなくなってしまいます。経過利子は、売り手がいつでも債券を売ってくれる環境を整えるためのしくみです。


5 経過利子の例 

数値例で経過利子を理解しましょう。3月25日と9月25日の年2回利払いをする社債を、5月24日に受け渡すときの経過利子を考えます。受け渡すのは額面100万円、利率2%の社債を1口だとします。

まず経過日数を求めましょうる。経過日数とは、直前の利払日の翌日から受渡日までの日数です。直前の利払日の翌日は3月26日です。3月は31日までありますので、3月で6日あります。4月は30日あります。5月は24日が受渡日です。それぞれの月の保有日数は次のようになります。

3月:6日
4月:30日
5月:24日

経過日数はこれらの和、6+30+24=60日です。経過利子は、年間の利子の額に経過日数の係数を掛けたものです。具体的には


分数の分母にある365は商慣行で定められています。うるう年も365で割ります。年間の利子は額面金額と利率の積で求められます。

額面100万円×2%=2万円

経過日数は60日ですので


3,287円くらいになります。売買約定代金の他に、この金額を買い手から売り手に払います。経過利子を含まない債券の値段を裸値段、経過利子を含む債券の値段を利含みといいます。

実際に売買するときには、経過利子の他にも、税金や手数料を考慮しなければなりません。

経過利子については、次のリンク先資料を参照してください。
https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/tax/20130821_007583.pdf
http://www.jsda.or.jp/about/jishukisei/web-handbook/106_saiken/files/c004.pdf

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