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EV/EBITDA倍率(株式業務:その5)


今日は「株式業務」の第5回です。試験によく出るEV/EBITDA倍率を紹介します。 

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

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この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

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上の動画のポイントをまとめます。


1 EV

EV(Enterprise Value)とは、「会社を丸ごと買うのにいくらかかるか」を表します。株式会社を買うには、まず株を買い占めなければなりません。株をすべて買うのにかかる金額は

株価×発行済株式総数

です。これを時価総額といいます。さらに、会社が借金をしているのであれば、それを肩代わりして返済しなければなりません。会社が現預金を持っているのであれば、それを返済に充てられますので

有利子負債ー現預金

となります。これらを組み合わせてEVを算出します。

EV=株価×発行済株式総数有利子負債ー現預金




2 EBITDA

EBITDA(Earnings Before Interest, Tax, Depreciation and Amortization)とは、「買収資金の返済に充てられる会社のもうけ」です。要素を日本語で式にすると

引き前当期純利益+支払利息減価償却費

支払利息は、「会社を丸ごと買って借金の肩代わりもする」と考えるのですから、買収後はかかりません。それで、支払利息の分も買収資金の返済に充てることができます。前回学んだ減価償却費は、現預金が減らない会計上の費用ですから、返済に充てることができます。は国によって異なります。企業買収を手がける人たちは国際的に活動していますので、税制が異なる国の会社を比べるために、税引き前の利益を用います。


3 EV/EBITDA倍率

EBITDAに対するEVの比率は、「会社を丸ごと買う資金(EV)を、会社の利益(EBITDA)で返済すると何年かかるか」を表します。買収交渉の入り口でよく用いられる指標です。


厳密には、株を過半数買い占めれば経営権を握れますので、会社を買収する資金はEVよりかなり少なくて済みます。しかし、交渉の入り口で「1株いくらで何株買って経営権を取得します」という、生々しい話を持ち出すと、会社を売ろうと思っていた人が心を閉ざしてしまうかもしれません。

「EV/EBITDA倍率8倍で考えていますが、どうですか」と持ちかければ、「無茶を言う人ではなさそうだな、話をきいてみようか」となります。買収交渉の現場は虚々実々の駆け引きですが、はじめは柔らかく接触するのがマナーなのだと思います。

動画の終わりに、KDDIによる株ドットコム証券の買収提案を取り上げました。ロイターのページから、カブドットコム証券の2018年3月期EV/EBITDA倍率は17.3倍であることがわかります。(カブドットコム証券は上場廃止になりましたので、現在は表示がありません。)


相場観として、EV/EBITDA倍率は8倍くらいとされています。KDDIはそれよりもはるかに高く買収することになります。KDDIの経営手腕が問われることになりそうです。

動画では計算問題を紹介しています。本番の対策として、パソコンの電卓を使って解いてみてください。

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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。