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配当率と配当性向(財務諸表と企業分析:その5)


今日は「財務諸表と企業分析」の第5回です。配当率と配当性向を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

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この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

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上の動画のポイントをまとめます。


1 配当

PERの回で説明しましたが、利益とは、売上と費用の差額です。売上からどの費目を差し引くかによって、いくつかの利益があります。

売上総利益:売上ー売上原価
営業利益 :売上総利益ー販管費
経常利益 :営業利益+営業外利益
当期純利益:経常利益+特別利益ー法人税など

株主に帰属するのは、売上から様々な費用を差し引いて、最後に残る当期純利益です。当期純利益の一部は配当として株主に還元されます。残りは会社に貯めおかれます。これを内部留保(利益剰余金)といいます。

当期純利益 → 配当
      → 内部留保

内部留保というと、会社の金庫にお金💰をしまっておくイメージになりますが、その多くは設備投資🏭など、会社の運営のためにつかわれています。

配当は、年度に何回でも出すことができます。企業分析をするときは1年度に出される配当の総額を基準に考えます。たとえば、中間配当と期末配当がある会社について考えるとき、中間配当と期末配当の合計を用いて分析します。

当期純利益のうち、どれくらいを配当として株主に還元できるかは法律で定められています(分配可能額:会社法461条)。詳しくは次のリンク先の資料をご覧ください。
https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/companies-act/2016-06-03-04.html


2 配当性向と配当率

配当性向とは、当期純利益に対する年度の配当額の比率です。


配当率とは、資本金に対する年度の配当額の比率です。分子の配当が年度に払い出される総額ですので、分母の資本金も期首・期末平均にしています。


配当性向と配当率の違いは、分母に当期純利益を取るのか、資本金を取るのかによります。名前が似ていて紛らわしいので注意してください。


3 計算の注意点

配当性向の問題文で、配当総額ではなく1株当たり配当額が与えられていることがあります。このときには、当期純利益を発行済株式総数で割って1株当たり当期純利益を計算し、配当性向を求めます。


配当性向は


外務員試験の中では、このように機転をきかして解く問題も出てきます。多くの例題にあたって対応できるようにしておきましょう。

次のリンク先から東京証券取引所の資料を見ると、配当性向は30%くらいであることがわかります。純利益のうち3割を配当に出し、7割を内部留保として設備投資などに用いていることになります。
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/index.html

動画の終わりに紹介した中野冷機という会社は配当性向が100%を超えています。決算書を見ると、1株当たり当期純利益が311.92円、配当額が312円です。純利益を超える配当を出しています。
https://nakano-reiki.com/ir/pdf/H3012IRT.pdf

このような無謀ともいえる配当額は、あまりに多くの現預金を貯め込んだ中野冷機に目をつけたファンドの要求によるものと考えられます。この点については、次のリンク先を参照してください。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39397370W8A221C1DTA000/

動画では計算問題を紹介しています。本番の対策として、パソコンの電卓を使って解いてみてください。

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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。