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その他のトピックス(債券業務:その6)


今日は「債券業務」の第6回です。この分野でよく出題されるこまごまとした用語などを紹介します。堅苦しい言葉が多くなりますが、試験の問題文もこのような言葉で書かれています。少しずつ慣れていきましょう。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。この単元には動画がありません。

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1 債券の取引

債券投資には、いくつか特徴的な取引があります。そのうち、外務員試験によく出る手法を紹介します。

入替売買とは、不利になりそうな銘柄を売り、有利になりそうな銘柄を買って、保有する債券を入れ替えることです。たとえば、金利が上がりそうなとき長期債から短期債へ入れ替え、金利が下がりそうなとき短期債から長期債へ入れ替えます。

金利上昇:長期債を売り、短期債を買う
金利低下:短期債を売り、長期債を買う

この入替売買は、金利が変動するとき、長期債(償還日までの期間が長い債券)の値動きは、短期債(償還日までの期間が短い債券)の値動きより大きくなる性質を利用しています。

金利が上がるとき、長期債は短期債より大きく値下がりします。値下がりによる損失を小さくするために、投資者は長期債を短期債へ入れ替えます。金利が下がるとき、長期債は短期債より大きく値上がりします。値上がりによる利益を大きくするために、投資者は短期債を長期債へ入れ替えます。

現先取引とは、未来に売り戻す(買い戻す)ことを取り決めて買う(売る)取引です。一時的に同じ銘柄・同じ数量の債券を買う(売る)取引です。

現先:未来に買い戻すことを取り決めて今売る
現先:未来に売り戻すことを取り決めて今買う

現先取引の詳細は、次のリンク先資料を参照してください。
http://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/chousa/kenkyukai/index.html

着地取引とは、約定日から1か月以上、6か月を超えない期間に債券の受け渡しをする取引のことです。少し先にまとまった資金を得る予定の大口投資家が、価格変動のリスクを避けるために、あらかじめ価格を決めて売買します。近年は、金利先物でリスクをヘッジすることができますので、あまり使われなくなりました。着地取引の詳細は、次のリンク先資料を参照してください。
http://www.jsda.or.jp/about/jishukisei/words/0118.html

ベーシス取引とは、債券の現物先物の価格差(ベーシス)から利益を得る取引のことです。ベーシスを式で表すと

ベーシス=現物価格ー先物価格×コンバージョンファクター

コンバージョンファクターの内容については外務員試験で問われませんので、式を暗記するだけで構いません。

現物と先物の価格差であるベーシスは、波のように広がったり狭まったりすると考えられています。ベーシスが広がっているとき、現物と先物のうち割高なものを売り、割安なものを買います。やがてベーシスが狭まると、売っていたものを買い戻し、買っていたものを売り戻して、利益が得られます。

ベーシス取引は難しいです。不慣れな人は「債券取引の問題で先物という言葉が出たらベーシス取引」と覚えておくだけで良いかもしれません。


2 債券ポートフォリオ

複数の証券に投資することをポートフォリオといいます。複数の債券に投資することを債券ポートフォリオといいます。債券ポートフォリオの運用のしかたにラダー型、ダンベル型があります。

ラダー型とは、償還日までの期間が短い社債から長い社債まで均等に保有するポートフォリオです。毎年同じ額の社債が償還され、それをまた長期債へ投資します。はしごを一段ずつ入れ替えるように見えるのでラダー型といいます。

ダンベル型とは利率が高い傾向にある長期債と、売買がしやすい短期債のみを保有するポートフォリオです。長期債と短期債の両端に投資が集中するさまが筋トレに使うダンベルに見えるので、ダンベル型といいます。


3 国債

これまで会社が発行する債券(社債)を例に説明してきました。債券は社債の他にもあります。外務員試験によく出るのは国債の分類です。

建設国債、特例国債、借換国債

発行の根拠となる法律によって、建設国債、特例国債、借換国債という分類があります。建設国債は、財政法4条1項但し書きを根拠として発行する国債です。財政法4条1項に

国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない

とあります。したがって、国債を発行しないことが財政運営の原則です。この条文には続きがあります。

但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる

このように、本文に続いて「但し」ではじまる文を但し書きといいます。この部分を根拠に、公共事業などのために発行する国債を建設国債といいます。

特例国債とは、建設国債を発行しても財源が足りないとき、それを補うために発行する国債です。財政法は国債を発行しないことを原則としていますので、特例国債を恒久的に認めてはいません。それで、1年度あるいは数年度の国債発行を特例として認める法律を特別に作ります。その法律にもとづいて発行する国債を特例国債といいます。平成31年度予算の特例国債は

東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法

という、とても長い名前の法律にもとづいて発行されています。この法律によって、平成34年度まで特例国債が発行できます。

借換国債とは、国債整理基金特別会計が、特別会計に関する法律46条にもとづいて発行する国債です。国債には60年で完済するというルールがあるのですが、投資者には60年国債ではなく10年国債などを保有したいというニーズがあります。このニーズに応えるべく、60年にわたり10年国債を6回乗り換えて、少しずつ国債を償還しています。この乗り換えのために発行する国債を借換国債といいます。

国庫短期証券、中期国債、長期国債

最終償還日までの期間によって、国債を分類することもあります。短期の資金繰りのために発行される期間1年以内の国債を国庫短期証券といいます。国庫短期証券は個人投資家も買えます。期間2年または5年の国債を中期国債、期間10年の国債を長期国債といいます。

そのほか期間20年、30年、40年の超長期国債、期間10年で償還される金額が物価と連動して変わる物価連動国債、期間15年で利子が変動する変動利付国債があります。

個人向け国債

債券の利回りの単元で説明しましたが、売却のタイミングが悪いと、債券投資のキャピタルゲインはマイナスになります。損することを極端に嫌う個人でも買いやすくするために設計された国債を個人向け国債といいます。

この国債には値動きがありませんので、キャピタルゲインがマイナスになることはありません。その代わり、利率は基準金利より低くなります。「もらえる利子が少し減っても、値下がりの損を避けたい」個人投資家が投資しています。

個人向け国債は、1万円を1口に毎月発行されています。細かい商品性については、次のリンク先資料を参照してください。
https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/


4 その他の債券

ここまでで、3,000字を超えてしまいました。長文、申し訳ないです…

その他の債券について手短に触れます。

地方債とは、地方公共団体が悪行する債券です。このうち全国型市場公募地方債は、すべての政令指定都市一部の都道府県が発行します。政府関係機関債のうち政府保証債は、元利払いを政府が保証します。

外債のうち、外務員試験によく出るのは、サムライ債、ショーグン債、ユーロ円債です。サムライ債は、外国の発行体が国内で発行する円建て債券です。ショーグン債は、外国の発行体が国内で発行する外貨建て債券です。ユーロ円債は、国外の円市場(ユーロ円市場)で発行される円建ての債券です。まとめると

サムライ債 :国内発行の円建て
ショーグン債:国内発行の外貨建て
ユーロ円債 :国外発行の円建て

この単元はとても細かいです。ただ、債券業務は配点が高い分野でもあります。前半の山場として、答えられる問題をできるだけ増やしていきましょう。

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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。