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投資信託の分類(投資信託等に関する業務:その2)


今日は「投資信託及び投資法人に関する業務」の第2回です。投資信託の分類を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。出題分野名は「投資信託及び投資法人に関する業務」が正式名称ですが、記事のタイトルに書くには長すぎるので「投資信託等に関する業務」と表記します。

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上の動画のポイントをまとめます。


1 投資家による分類

投資信託は、販売対象によって公募と私募に分類されます。50名以上の投資者に販売するとき、公募投資信託といいます。私たち個人投資家が購入する投資信託は、このタイプの投資信託です。50名未満の投資者に販売するとき、私募投資信託といいます。また、適格機関投資家と特定機関投資家のみに販売するときもこの私募投資信託といいます。

次のリンク先資料(金融庁)をみると、適格機関投資家として、証券会社、銀行、信金、短資会社、農協などが掲げられています。特定機関投資家として、国、日本銀行、特殊法人、預金保険機構などが掲げられています。
https://www.fsa.go.jp/common/law/tekikaku/index.html
https://www.fsa.go.jp/common/law/tokutei/index.html

多くの投資者に販売することを公募少数の投資者またはプロの投資者に販売することを私募と覚えると整理しやすいかと思います。


2 組み入れ資産による分類

投資信託は、組み入れる資産によって公社債投資信託と株式投資信託に分類されます。公社債投資信託には、株式を組み入れることができません株式投資信託には、株式を組み入れることができます

MRFMMFは公社債投資信託の例です。どちらも国債や格付けの高い社債、コマーシャルペーパーなどに投資します。1口1円毎日決算することも共通しています。証券口座を開いている人にとって、銀行預金のような役割を果たしています。

MRFとMMFの違いは、MRFが解約手数料が無料なのに対して、MMFが30日以内に解約するとき手数料を払う点です。MRFは普通預金、MMFは定期預金に商品性が似ています。

下のリンク先から投資信託協会のデータをみると、2017年5月以降、MMFの残高は0です。これは、2016年2月にマイナス金利が導入され、運用で資産を殖やせる状況から、運用すると資産が減る状況に変わったことを反映しています。
https://www.toushin.or.jp/statistics/statistics/data/

私たち個人投資家が目にするほとんどの投資信託は、株式投資信託です。たとえば、株価指数に連動するETF(上場投資信託)は、株式投資信託です。

注意していただきたいのは、株式投資信託はあくまで株式に投資できる投資信託であることです。ある時点で、株式に投資していなくても、株式に投資する可能性がある投資信託は株式投資信託に分類されます。


3 解約・換金方法による分類

投資信託は、解約できるかどうかによってオープン・エンド型とクローズド・エンド型に分かれます。オープン・エンド型は解約できますクローズド・エンド型は解約できません

オープン・エンド型は、投資を終えたい投資者は解約を申し出ます。解約するとき、投資信託の純資産額(時価総額のようなもの)にもとづいて、返金される金額が決まります。解約が生じると、投資信託の資金量は減ります。したがって、オープン・エンド型の投資信託は資金量が不安定です。

クローズド・エンド型は、解約できませんので資金量が安定しています。これは投資信託を運用する側の利点です。しかし、投資者は解約ができないと困ります。投資者は市場で他の投資者に売ることで投資信託を現金化します。したがって、クローズド・エンド型の投資信託は証券市場に上場しています。

不動産投資信託(J-REIT)は、クローズド・エンド型投資信託の例です。投資法人を設立し、投資者から集めた資金の70%以上を不動産等で運用します。不動産投資信託が発行する投資口は、東京証券取引所で自由に譲渡できます。詳しくは、次のリンク先資料を見てください。
https://www.toushin.or.jp/reit/about/scheme/


4 ETF

上場投資信託(ETF)とは、東京証券取引所で自由に売買できる投資信託です。普通の株(トヨタや任天堂の株など)とおなじように、指値注文成行注文を出して売買できます。信用取引もできます。日経平均株価やTOPIXのインデックスに連動するETFに人気があります。

私たち一般投資家にとって、市場で売買するETFはクローズド・エンド型です。これに対して、大口投資家は、現物株式を拠出することで受益権を取得することができます。少し複雑なしくみになっています。詳しくは、次のリンク先資料を見てください。
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/etf/scheme/

投資信託の分野は、他の分野に比べて覚えるのが大変です。無理せず少しずつ慣れていきましょう。

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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。




投資信託の概要(投資信託等に関する業務:その1)


今日は「投資信託及び投資法人に関する業務」の第1回です。投資信託の概要を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。出題分野名は「投資信託及び投資法人に関する業務」が正式名称ですが、記事のタイトルに書くには長すぎるので「投資信託等に関する業務」と表記します。

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上の動画のポイントをまとめます。


1 投資信託のニーズ

前回、債券の単元で、ポートフォリオという用語を紹介しました。これは、1銘柄ではなく、複数の証券に投資することです。

複数の証券に投資するには、多額の資金が必要です。1銘柄100万円ずつ、10銘柄に投資するには1,000万円もの資金が必要です。私たち個人投資家でこれほどの投資資金を用意できる人は多くないと思います。

資金に乏しい私たちにも、「多くの銘柄に投資したい」というニーズがあります。それに応えるために作られたのが投資信託という金融商品です。

下の図表のように、投資者から資金を集め、それをまとめて様々な証券に投資します。カゴメやカシオのような国内企業の株式に投資することもできますし、Appleのような外国企業の株式に投資することもできます。債券に投資することもできます。


このように、小口投資家に大きなポートフォリオを提供するしくみを投資信託といいます。


2 投資信託の分類

投資信託のしくみは、会社型と契約型に大別されます。会社型投資信託は、資産運用をするためだけに設立された法人です。「〇〇投資法人」と、会社の名前に投資法人という言葉をつけなければなりません。

契約型投資信託とは、法人ではなく、委託者と受託者の2者の契約にもとづき運営される投資信託です。委託者指図型投資信託と委託者非指図型投資信託がありますが、外務員試験によく出るのは委託者指図型投資信託です。


3 委託者指図型投資信託

次の図表は委託者指図型投資信託の概要です。私たちは証券会社などで投資信託を購入します。私たちには図の左側のようすしか見えません。しかし、重要なのは図の右側です。


契約型投資信託は、委託者(〇〇アセットマネジメント)と受託者(〇〇信託銀行)の契約にもとづいて運用されます。販売会社、委託者、受託者はおなじ金融グループの会社であることが多いです。


4 委託者と受託者の仕事

委託者指図型投資信託では、委託者が受託者に運用の指図をします。〇〇アセットマネジメントは「あの株を買ってください」「この社債を買ってください」と指示をします。また、投資信託の運用方針を投資者へ伝える目論見書や、運用成績を投資者へ伝える運用報告書を作成します。加えて、投資信託の投資価値を表す基準価額を計算します。

難しい用語が多いですが、委託者は指図をしたり書類を作成する人なんだというイメージを持っていただければ大丈夫です。

受託者である〇〇信託銀行は、証券会社と〇〇アセットマネジメントを経由して集められた投資者の資金を預かります。金庫番のような役割を担っています。委託者の指示を受けて、預かった資金で証券の購入します。株式に投資しているのであれば、委託者の指図にもとづき、株主総会で議決権を行使します。加えて、基準価額を計算します。

こちらも難しい用語が多いですが、受託者は財産を預かり、指図を受けて行動する人なんだというイメージを持っていただければ大丈夫です。

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その他のトピックス(債券業務:その6)


今日は「債券業務」の第6回です。この分野でよく出題されるこまごまとした用語などを紹介します。堅苦しい言葉が多くなりますが、試験の問題文もこのような言葉で書かれています。少しずつ慣れていきましょう。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。この単元には動画がありません。

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1 債券の取引

債券投資には、いくつか特徴的な取引があります。そのうち、外務員試験によく出る手法を紹介します。

入替売買とは、不利になりそうな銘柄を売り、有利になりそうな銘柄を買って、保有する債券を入れ替えることです。たとえば、金利が上がりそうなとき長期債から短期債へ入れ替え、金利が下がりそうなとき短期債から長期債へ入れ替えます。

金利上昇:長期債を売り、短期債を買う
金利低下:短期債を売り、長期債を買う

この入替売買は、金利が変動するとき、長期債(償還日までの期間が長い債券)の値動きは、短期債(償還日までの期間が短い債券)の値動きより大きくなる性質を利用しています。

金利が上がるとき、長期債は短期債より大きく値下がりします。値下がりによる損失を小さくするために、投資者は長期債を短期債へ入れ替えます。金利が下がるとき、長期債は短期債より大きく値上がりします。値上がりによる利益を大きくするために、投資者は短期債を長期債へ入れ替えます。

現先取引とは、未来に売り戻す(買い戻す)ことを取り決めて買う(売る)取引です。一時的に同じ銘柄・同じ数量の債券を買う(売る)取引です。

現先:未来に買い戻すことを取り決めて今売る
現先:未来に売り戻すことを取り決めて今買う

現先取引の詳細は、次のリンク先資料を参照してください。
http://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/chousa/kenkyukai/index.html

着地取引とは、約定日から1か月以上、6か月を超えない期間に債券の受け渡しをする取引のことです。少し先にまとまった資金を得る予定の大口投資家が、価格変動のリスクを避けるために、あらかじめ価格を決めて売買します。近年は、金利先物でリスクをヘッジすることができますので、あまり使われなくなりました。着地取引の詳細は、次のリンク先資料を参照してください。
http://www.jsda.or.jp/about/jishukisei/words/0118.html

ベーシス取引とは、債券の現物先物の価格差(ベーシス)から利益を得る取引のことです。ベーシスを式で表すと

ベーシス=現物価格ー先物価格×コンバージョンファクター

コンバージョンファクターの内容については外務員試験で問われませんので、式を暗記するだけで構いません。

現物と先物の価格差であるベーシスは、波のように広がったり狭まったりすると考えられています。ベーシスが広がっているとき、現物と先物のうち割高なものを売り、割安なものを買います。やがてベーシスが狭まると、売っていたものを買い戻し、買っていたものを売り戻して、利益が得られます。

ベーシス取引は難しいです。不慣れな人は「債券取引の問題で先物という言葉が出たらベーシス取引」と覚えておくだけで良いかもしれません。


2 債券ポートフォリオ

複数の証券に投資することをポートフォリオといいます。複数の債券に投資することを債券ポートフォリオといいます。債券ポートフォリオの運用のしかたにラダー型、ダンベル型があります。

ラダー型とは、償還日までの期間が短い社債から長い社債まで均等に保有するポートフォリオです。毎年同じ額の社債が償還され、それをまた長期債へ投資します。はしごを一段ずつ入れ替えるように見えるのでラダー型といいます。

ダンベル型とは利率が高い傾向にある長期債と、売買がしやすい短期債のみを保有するポートフォリオです。長期債と短期債の両端に投資が集中するさまが筋トレに使うダンベルに見えるので、ダンベル型といいます。


3 国債

これまで会社が発行する債券(社債)を例に説明してきました。債券は社債の他にもあります。外務員試験によく出るのは国債の分類です。

建設国債、特例国債、借換国債

発行の根拠となる法律によって、建設国債、特例国債、借換国債という分類があります。建設国債は、財政法4条1項但し書きを根拠として発行する国債です。財政法4条1項に

国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない

とあります。したがって、国債を発行しないことが財政運営の原則です。この条文には続きがあります。

但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる

このように、本文に続いて「但し」ではじまる文を但し書きといいます。この部分を根拠に、公共事業などのために発行する国債を建設国債といいます。

特例国債とは、建設国債を発行しても財源が足りないとき、それを補うために発行する国債です。財政法は国債を発行しないことを原則としていますので、特例国債を恒久的に認めてはいません。それで、1年度あるいは数年度の国債発行を特例として認める法律を特別に作ります。その法律にもとづいて発行する国債を特例国債といいます。平成31年度予算の特例国債は

東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法

という、とても長い名前の法律にもとづいて発行されています。この法律によって、平成34年度まで特例国債が発行できます。

借換国債とは、国債整理基金特別会計が、特別会計に関する法律46条にもとづいて発行する国債です。国債には60年で完済するというルールがあるのですが、投資者には60年国債ではなく10年国債などを保有したいというニーズがあります。このニーズに応えるべく、60年にわたり10年国債を6回乗り換えて、少しずつ国債を償還しています。この乗り換えのために発行する国債を借換国債といいます。

国庫短期証券、中期国債、長期国債

最終償還日までの期間によって、国債を分類することもあります。短期の資金繰りのために発行される期間1年以内の国債を国庫短期証券といいます。国庫短期証券は個人投資家も買えます。期間2年または5年の国債を中期国債、期間10年の国債を長期国債といいます。

そのほか期間20年、30年、40年の超長期国債、期間10年で償還される金額が物価と連動して変わる物価連動国債、期間15年で利子が変動する変動利付国債があります。

個人向け国債

債券の利回りの単元で説明しましたが、売却のタイミングが悪いと、債券投資のキャピタルゲインはマイナスになります。損することを極端に嫌う個人でも買いやすくするために設計された国債を個人向け国債といいます。

この国債には値動きがありませんので、キャピタルゲインがマイナスになることはありません。その代わり、利率は基準金利より低くなります。「もらえる利子が少し減っても、値下がりの損を避けたい」個人投資家が投資しています。

個人向け国債は、1万円を1口に毎月発行されています。細かい商品性については、次のリンク先資料を参照してください。
https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/


4 その他の債券

ここまでで、3,000字を超えてしまいました。長文、申し訳ないです…

その他の債券について手短に触れます。

地方債とは、地方公共団体が悪行する債券です。このうち全国型市場公募地方債は、すべての政令指定都市一部の都道府県が発行します。政府関係機関債のうち政府保証債は、元利払いを政府が保証します。

外債のうち、外務員試験によく出るのは、サムライ債、ショーグン債、ユーロ円債です。サムライ債は、外国の発行体が国内で発行する円建て債券です。ショーグン債は、外国の発行体が国内で発行する外貨建て債券です。ユーロ円債は、国外の円市場(ユーロ円市場)で発行される円建ての債券です。まとめると

サムライ債 :国内発行の円建て
ショーグン債:国内発行の外貨建て
ユーロ円債 :国外発行の円建て

この単元はとても細かいです。ただ、債券業務は配点が高い分野でもあります。前半の山場として、答えられる問題をできるだけ増やしていきましょう。

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社債の発行と売買(債券業務:その5)


今日は「債券業務」の第5回です。社債の発行と売買について説明します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。この単元には動画がありません。

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1 利付債と割引債

これまで、利子が付く債券を例に説明してきました。利子が付く債券を利付債といいます。

利子が付かない債券もあります。利子が付かない債券に投資する投資者がいるのは、額面金額より安く発行されるためです。たとえば、額面金額100万円の債券が98万円で発行されれば、2万円のもうけが得られます。額面金額より安く発行されることから、利子が付かない債券を割引債といいます。


2 発行条件

債券の額面金額は1億円、100万円などさまざまですが、評価するときには100円に標準化します。発行するときの価格が100円を超えるとき、オーバーパー発行といいます。ちょうど100円であるとき、パー発行といいます。100円を下回るとき、アンダーパー発行といいます。

発行価格が
100円超  → オーバーパー発行
100円   → パー発行
100円未満 → アンダーパー発行

多くの人にとっては、「パーって何?」という感じだと思いますが、ゴルフ⛳️🏌️‍♂️というスポーツを知っている人は聞いたことがある用語だと思います。ゴルフの用語を債券の評価に流用しています。

ゴルフは、小さなボールをホールに入れるスポーツです。ちょうど規定回数でボールをホールに入れるとパーになります。規定回数を超えてしまうとオーバーパーになります。規定回数未満で上がるとアンダーパーになります。


3 発行

債券を発行するとき、多額の資金を本当に集められるか不安があります。その不安を和らげるために、債券をまとめて買い受ける人を引受人といいます。引受人はまとめて購入した債券を小口に分けて投資者へ販売します。

債券の発行者 → 引受人 → 投資者

まとめ買いをする引受人は、債券が売れ残ったり、安値で売らざるを得なくなるリスクにさらされます。リスクを分散するため、大型案件は1人で引き受けず、グループで引き受けます。このグループを引受シンジケート団(引受シ団)といいます。シンジケートとは、複数の引受人が共同で販売するしくみです。引受シ団になれる会社は、発行者によって異なります。

社債等:証券会社だけ
地方債、政府保証債:証券会社、銀行

社債が発行された後、利子の支払いが滞りなく行われるように管理する人を置きます。これを社債管理者といいます。近年は個人投資家向けに発行される社債が増えてきていますので、投資者保護の観点から、社債管理者の役割は重要になってきています。銀行や信託銀行が社債管理者になります。

社債の額面金額(各社債の金額)が1億円以上であるときには、社債管理者を置く必要がありません。額面1億円の社債に投資できるのは巨額の資金を運用するプロだと考えられるからです。


4 経過利子

債券を実際に売買するとき、経過利子というものを考慮しなければなりません。経過利子とは、買い手が売り手に払う利払い日の間の利子です。

少し話が込み入りますので、下の図表で説明します。利払い日の間に債券の受け渡し(売買契約の決済)が行われるとしましょう。受渡日まで保有していた売り手は「ここまで保有してきたのだから、少なくとも次の利払日に払われる利子の一部は自分のものだ」と主張します。買い手は、これに応じて、次の利払日に受け取る利子の一部を売り手に払います。


売り手のわがままにみえますが、売り手の主張を聞き入れないと、売り手は利払いを受けた直後にしか債券を売らなくなってしまいます。経過利子は、売り手がいつでも債券を売ってくれる環境を整えるためのしくみです。


5 経過利子の例 

数値例で経過利子を理解しましょう。3月25日と9月25日の年2回利払いをする社債を、5月24日に受け渡すときの経過利子を考えます。受け渡すのは額面100万円、利率2%の社債を1口だとします。

まず経過日数を求めましょうる。経過日数とは、直前の利払日の翌日から受渡日までの日数です。直前の利払日の翌日は3月26日です。3月は31日までありますので、3月で6日あります。4月は30日あります。5月は24日が受渡日です。それぞれの月の保有日数は次のようになります。

3月:6日
4月:30日
5月:24日

経過日数はこれらの和、6+30+24=60日です。経過利子は、年間の利子の額に経過日数の係数を掛けたものです。具体的には


分数の分母にある365は商慣行で定められています。うるう年も365で割ります。年間の利子は額面金額と利率の積で求められます。

額面100万円×2%=2万円

経過日数は60日ですので


3,287円くらいになります。売買約定代金の他に、この金額を買い手から売り手に払います。経過利子を含まない債券の値段を裸値段、経過利子を含む債券の値段を利含みといいます。

実際に売買するときには、経過利子の他にも、税金や手数料を考慮しなければなりません。

経過利子については、次のリンク先資料を参照してください。
https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/tax/20130821_007583.pdf
http://www.jsda.or.jp/about/jishukisei/web-handbook/106_saiken/files/c004.pdf

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社債と転換社債の値動き(債券業務:その4)


今日は「債券業務」の第4回です。これまで学んできた社債と転換社債の値動きについて説明します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。この単元には動画がありません。

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1 社債

発行した後に金利が変動すると、社債の価格は変わります。金利が上がると、社債の利子の魅力は下がりますので価格は下がります。金利が下がると、社債の利子の魅力は高まりますので価格は上がります。

利率2%で社債を発行した後、金利が3%に上がれば、社債で運用するより、銀行に預けた方がより多くの利子を得られます。それで社債の魅力が下がり、価格が下がります。

外務員試験では、金利が変動する要因として金利商品の価格、金融政策、会社の信用力、景気が問われます。

金利に関係する金融商品にはコール、手形、CP(コマーシャルペーパー)、CD(譲渡性預金)などがあります。これらの金利が上がると、社債の利子の魅力は下がりますので価格は下がります。これらの金利が下がると、社債の利子の魅力は高まりますので価格は上がります。

金融商品の金利上昇 → 社債価格下落
金融商品の金利低下 → 社債価格上昇

金融引締政策とは、日本銀行が金利を上げる政策です。金利が上がりますので、社債の価格は下がります。金融緩和政策とは、日本銀行が金利を下げる政策です。金利が下がりますので、社債の価格は上がります。

金融引締政策 → 社債価格下落
金融緩和政策 → 社債価格上昇

社債を発行した会社の経営がおかしくなると、社債の利払いが滞ったり額面の返済ができなくなったりします。そのような怖れがどれくらいあるのかを表すのがクレジットスプレッドです。クレジットとは、会社の評判のことです。スプレッドとは評判のランクのことです。会社の評判が悪くなると、クレジットスプレッドが拡大し、社債の価格は下がります。会社の評判が良いとき、クレジットスプレッドが縮小し、社債の価格は上がります。

評判悪化 → スプレッド拡大 → 社債価格下落
評判好転 → スプレッド縮小 → 社債価格上昇

景気が良いとき、お金を借りたい人や企業が増えます。お金の需要が高まりますから、お金の値段とも言える金利は上がります。また、景気が良いときにはインフレになりがちです。インフレは金利に上乗せされると考えられていますので、金利は上がります。景気が悪いときはこの逆になります。

好景気:借り手が多い、インフレ → 金利上昇 → 社債価格下落
不景気:借り手が少ない、デフレ → 金利低下 → 社債価格上昇

社債の価格は、金利と逆に動くことを覚えておきましょう。


2 転換社債

転換社債型新株予約権付社債は普通の社債より複雑なしくみを持ちます。したがって、価格が動く要因も増えます。外務員試験では、上で説明した金利要因の他に、株価と株価のボラティリティが問われます。

転換社債は、社債から株式へ乗り換えることができる社債です。したがって、株価が下がれば転換社債の魅力が下がり、価格は下がります。株価が上がれば転換社債の魅力が高まり、価格は上がります。

株価下落 → 転換社債価格下落
株価上昇 → 転換社債価格上昇

ボラティリティとは株価の変動率のことです。株価があまり動かないとき、乖離率がマイナスになるところまで株価が上がる可能性は低くなります。転換のオプション価値が低くなりますので価格は下がります。株価が大きく動くとき、乖離率がマイナスになるところまで株価が上がる可能性は高くなります。転換のオプション価値が高まりますので価格は上がります。

ボラティリティ低下 → 転換社債価格下落
ボラティリティ上昇 → 転換社債価格上昇

「オプション価値」については、外務員一種で問われます。外務員二種の段階ではこれくらいの知識で大丈夫です。

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転換社債の例題:パリティ価格と乖離率(債券業務:その3)


今日は「債券業務」の第3回です。前回に引き続いて転換社債のしくみを紹介します。 

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上の動画のポイントをまとめます。


1 転換社債型新株予約権付社債

前回の復習からはじめましょう。転換社債型新株予約権付社債とは、株式をある値段(転換価額)で買う権利がついた社債です。名前がとても長いので、単に転換社債ということがあります。

転換社債型とは、株式を得るときに社債を手放すことを意味します。新株予約権付とは、株式を得る権利を意味します。それで、株式を得る権利を行使するとき社債を手放して株式を得るしくみになっている社債を転換社債型新株予約権付社債といいます。


今日は、転換のタイミングを探るための指標、パリティ価格と乖離率について学びます。


2 転換のタイミング

下の図表を用いて、転換のタイミングを考えましょう。水色の右上がりの曲線は、転換前の転換社債の価格を表します。赤色の右上がりの線は、転換後の価格(パリティ価格)を表します。


投資家は、水色の曲線と赤色の線を比べて、高い方を選びます。

青色の曲線>赤色の線:転換せず、社債のままで保有
青色の曲線<赤色の線:転換して、株式を保有

パリティ価格から、転換社債の価格がどれほど離れているのかを率で表したものを乖離率といいます。パリティ価格が基準になりますので、乖離率がプラスであるとき、社債のままで保有することが有利です。乖離率がマイナスであるとき、株式に転換することが有利になります。


3 パリティ価格と乖離率

パリティ価格と乖離率を求めてみましょう。パリティ価格とは、転換後の価格です。転換価額で時価がつく株式に乗り換えますので、パリティ価格は次の式から得られます。



転換価額(分母)と引き換えに、株式(分子)を得ます。最後に100をかけているのは、額面金額100円に基準化するためです。パリティ価格は転換して得られるものを表します。

乖離率は、パリティ価格を基準とした転換社債の価格を率で表したものです。「乗り換えないとき、何%得するか」を表します。


「乗り換えないとき、何%得するか」というのは、直線的ではない言い方ですが、このような立式になっていますので、しかたありません。乖離率がプラスであるとき、乗り換えないことが有利になります。乖離率がマイナスであるとき、乗り換えることが有利になります。

動画で紹介したLINEによる転換社債型新株予約権付社債の発行については、次のリンク先資料をご覧ください。
https://jp.reuters.com/article/line-bond-idJPKCN1LK0MT
https://scdn.line-apps.com/stf/linecorp/ja/ir/all/LINE_20180904_2.pdf

動画では計算問題を紹介しています。本番の対策として、パソコンの電卓を使って解いてみてください。

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転換社債のしくみ:アップ率、取得株数(債券業務:その2)


今日は「債券業務」の第2回です。転換社債のしくみを紹介します。 

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上の動画のポイントをまとめます。


1 転換社債型新株予約権付社債

転換社債型新株予約権付社債とは、株式をある値段(転換価額)で買う権利がついた社債です。名前がとても長いので、このブログでは、単に転換社債と書くことがあります。

転換社債型とは、株式を得るときに社債を手放すことを意味します。新株予約権とは、株式を得る権利を意味します。株式を得る権利を行使するとき社債を手放して株式を得るしくみになっている社債を転換社債型新株予約権付社債といいます。


普通の社債ではなく、このような複雑なしくみの社債を用いるのは、投資者・発行者双方にメリットがあるためです。

投資者には、株が値上がりしたとき、社債を株に換えられるメリットがあります。発行者には、予約権の分だけ利子の支払いを減らせるメリットがあります。さらに、社債が株に転換されれば、額面金額を返済する必要もなくなります。手元に現預金を置いておきたい成長途上の会社にとって、この社債はとても便利です。



2 転換価額の設定

転換価額とは、社債を株式に転換するときの株価です。これは発行するときにあらかじめ定めます。転換価額は、株式の時価より少し高く設定します。

転換価額株の時価より低く設定してしまうと、取引所で株を買うより安く買えますので、投資者はすぐ社債を株に転換してしまいます。(社債として発行する意味がなくなってしまいます…)

たとえば、下の図のように、株の時価が1,200円であるとき、転換価額を1,500円に設定します。



3 アップ率

転換価額と株の時価の差を比率で表したものをアップ率といいます。


上の数値を例に計算すると


転換価額は、株の時価の25%増しで設定されています。


4 取得株数


転換価額で社債1口を株式に換えると、何株得られるのでしょうか。得られる株数は、転換社債の額面を転換価額で割って求めます。


たとえば、転換社債の額面が100万円、転換価額が1,500円であるとき、取得株数は


666株取得できます。端数の0.666…株は、現金で払うか、切り捨てます。現金で払うとき、1株1,500円ですので

1,500×0.666=1,000

発行者は投資者に1,000円を払うことになります。

転換社債は難しい単元ですので、今回はここまでとします。次回は転換のタイミングを測るパリティ価格や乖離率について紹介します。是非つづけてご覧ください。

動画では計算問題を紹介しています。本番の対策として、パソコンの電卓を使って解いてみてください。

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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。




債券の利回り(債券業務:その1)


今日は「債券業務」の第1回です。債券の利回りを紹介します。 

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

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この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

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上の動画のポイントをまとめます。


1 社債

発行者が投資者から資金を集めるために発行する証書のことを債券といいます。現在は完全にペーパーレス化されていますが、以前は卒業証書のような紙を発行して、投資者にそれを渡し、代わりにお金を受け取っていました。会社が発行する債券を社債といいます。

株式との違いは、満期(最終償還日)があることです。株式は出資を得るために発行しますので、ふつう返済する必要がありません債券は借りたお金を満期に返済する必要があります

株式:返済しない(債権者を保護するため)
社債:返済する(債権者から借りているため)

社債1口(ひとくち)あたり返済すべき金額を額面金額とか各社債の金額といいます。外務員試験では、額面金額を100円に標準化して計算します。満期までの期間、発行者は定期的に利子を払います。


年間の利子の額は、額面金額に利率を掛けて求めます。額面金額100円、利率2%であれば

年間の利子=100円×2%=2円

利率が2%であるとき、年間の利子は額面100円当たり2円になります。


2 社債の利回り

株式業務の分野でも学びましたが、利回りとは投資の効率のことです。社債のキャピタルゲインとインカムゲインはそれぞれ

キャピタルゲイン:社債の値上がり益
インカムゲイン:利子

です。購入価格をP0、売却価格をPT、利率をD%、保有期間をT年とすると、社債の利回りは


第1項は1年当たりのキャピタルゲインの投資効率を表します。1年当たりのキャピタルゲインですので、キャピタルゲイン(PTーP0)を保有期間Tで割ります。

第2項はインカムゲインの投資効率を表します。注意していただきたいのは、Dは%を除いた数字だという点です。たとえば、利率が2%なら、Dは2%(0.02)ではなく2になります。

正確には、Dは1年あたりの利子の額です。利率2%であれば、100円×2%=2円がDの値になります。外務員試験では、なぜだかこれを利率と表記します。

上の式の第2項(D÷P0)だけを直接利回りといいます。これもたまに試験に出ますので、一緒に覚えておきましょう。


3 利回りの種類

社債の利回りは、「いつからいつまで投資するか」によって呼び方が異なります。社債発行時に購入して満期まで保有するとき、応募者利回りといいます。社債発行後に購入して満期まで保有するとき、最終利回りといいます。満期前に売却するとき、所有期間利回りといいます。



どの利回りを計算するときも、上に掲げた「社債の利回り」の式を使います。問題集で多くの例題にあたって、計算に慣れておきましょう。


4 債券の単価

社債の利回りの式を変形すると、ある利回りを得るための購入単価を求める式が得られます。(株式業務の単元で学んだ採算株価と似たようなものです。)


これを社債の購入価格P0について解きます。分子にも分母にもP0があってややこしいので、まず両辺にP0を掛けます。

利回り×P0=(PTーP0)÷T+D

つづいて、両辺にTを掛けます。

利回り×P0×T=(PTーP0)+D×T

P0がある項を左辺にまとめます。

P0+利回り×P0×T=PT+D×T

両辺を(1+利回り×T)で割ります。


外務員試験では、「残存期間4年、利率2%の社債をいくらで買えば最終利回りが3%になるか」という形式の問題が出されます。最終利回りですから、PTは額面の100円、Tは4年、Dは2、利回りは3%ですから


計算結果は96.428…円になります。この金額で購入すれば、利回り3%を達成できます。

動画の終わりに紹介した社債の統計と銀行預金の金利については、次のリンク先資料を参照してください。
http://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/saiken_hakkou/youkou/ichiran.html
https://info.finance.yahoo.co.jp/interest/large/?region=0

動画では計算問題を紹介しています。本番の対策として、パソコンの電卓を使って解いてみてください。

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その他のトピックス(財務諸表と企業分析:その6)


今日は「財務諸表と企業分析」の第6回です。この分野でよく出題されるこまごまとした用語や考え方を紹介します。堅苦しい言葉が多くなりますが、試験の問題文もこのような言葉で書かれています。少しずつ慣れていきましょう。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。この単元には動画がありません。

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1 計算書類と財務諸表

計算書類は、取引先に会社の状況を知らせるための書類です。大会社(会社法2条6号:資本金5億円以上または負債200億円以上)は、次の書類を作成し、公表しなければなりません(会社計算規則61条)。

損益計算書:一定期間における経営成績
貸借対照表:一定時点における財政状態
株主資本等変動計算書
連結注記表

財務諸表は、投資者に会社の状況を知らせるための書類です。有価証券報告書を提出する会社は、次の書類を作成し、公表しなければなりません(金融商品取引法131条、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則1条)。

損益計算書
貸借対照表
株主資本等変動計算書
キャッシュフロー計算書
製造原価報告書(製造業)
附属明細表

キャッシュフロー計算書とは、営業・投資・財務によって生じる現預金の増減を記録する書類です。営業キャッシュフローについては、株価キャッシュフロー倍率(PCFR)の回に説明しました。

私たちのような個人投資家も投資しますので、金融商品取引法は、会社法より多くの情報を提供するよう会社に求めています。外務員の学習分野が「財務諸表と企業分析」になっているのは、外務員が投資者に接する仕事であるためです。


2 連結財務諸表

複数の会社がグループとして運営されることがあります。これを企業集団といいます。企業集団全体のようすをあらわす書類を連結財務諸表といいます。

どこまでを連結対象とするのかについて、次のような用語があります。

子会社:親会社が議決権の50%超を所有している会社など
非連結子会社:親会社による支配が一時的である会社
関連会社:親会社が議決権の20%以上を所有している会社など

子会社、関連会社については、議決権の比率が基準を満たしていなくても、実質的な状況をみて、子会社、関連会社とすることもあります。この点が試験で問われますので覚えておきましょう。

子会社には連結法を適用します。まず親会社と子会社の数値を合算し、その後で非支配株主持分を除きます。非連結子会社と関連会社には持分法を適用します。関連会社の損益だけを営業外利益に計上します。

子会社は親会社と一体、非連結子会社と関連会社は親会社による株式投資と考えるとわかりやすいかもしれません。くわしくは次のリンク先の資料をみてください。
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/spe-tanki_1.pdf
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/zaigai_2015_3.pdf


3 自己資本比率と負債比率

これまで紹介してきた流動比率、総資本回転率、配当率などの他にも、試験に出る比率がいくつかあります。ここでは安全性をみる自己資本比率と負債比率を紹介します。

自己資本比率とは


この比率が高い会社は、不況に強く健全な発展が期待できる会社です。負債比率とは


分子の負債総額は流動負債と固定負債の合計です。この比率は100%以下が望ましいとされています。

他にも細かい指標や用語がありますが、今回紹介したものから優先的に覚えると効率的だと思います。

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配当率と配当性向(財務諸表と企業分析:その5)


今日は「財務諸表と企業分析」の第5回です。配当率と配当性向を紹介します。

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上の動画のポイントをまとめます。


1 配当

PERの回で説明しましたが、利益とは、売上と費用の差額です。売上からどの費目を差し引くかによって、いくつかの利益があります。

売上総利益:売上ー売上原価
営業利益 :売上総利益ー販管費
経常利益 :営業利益+営業外利益
当期純利益:経常利益+特別利益ー法人税など

株主に帰属するのは、売上から様々な費用を差し引いて、最後に残る当期純利益です。当期純利益の一部は配当として株主に還元されます。残りは会社に貯めおかれます。これを内部留保(利益剰余金)といいます。

当期純利益 → 配当
      → 内部留保

内部留保というと、会社の金庫にお金💰をしまっておくイメージになりますが、その多くは設備投資🏭など、会社の運営のためにつかわれています。

配当は、年度に何回でも出すことができます。企業分析をするときは1年度に出される配当の総額を基準に考えます。たとえば、中間配当と期末配当がある会社について考えるとき、中間配当と期末配当の合計を用いて分析します。

当期純利益のうち、どれくらいを配当として株主に還元できるかは法律で定められています(分配可能額:会社法461条)。詳しくは次のリンク先の資料をご覧ください。
https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/commentary/companies-act/2016-06-03-04.html


2 配当性向と配当率

配当性向とは、当期純利益に対する年度の配当額の比率です。


配当率とは、資本金に対する年度の配当額の比率です。分子の配当が年度に払い出される総額ですので、分母の資本金も期首・期末平均にしています。


配当性向と配当率の違いは、分母に当期純利益を取るのか、資本金を取るのかによります。名前が似ていて紛らわしいので注意してください。


3 計算の注意点

配当性向の問題文で、配当総額ではなく1株当たり配当額が与えられていることがあります。このときには、当期純利益を発行済株式総数で割って1株当たり当期純利益を計算し、配当性向を求めます。


配当性向は


外務員試験の中では、このように機転をきかして解く問題も出てきます。多くの例題にあたって対応できるようにしておきましょう。

次のリンク先から東京証券取引所の資料を見ると、配当性向は30%くらいであることがわかります。純利益のうち3割を配当に出し、7割を内部留保として設備投資などに用いていることになります。
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/index.html

動画の終わりに紹介した中野冷機という会社は配当性向が100%を超えています。決算書を見ると、1株当たり当期純利益が311.92円、配当額が312円です。純利益を超える配当を出しています。
https://nakano-reiki.com/ir/pdf/H3012IRT.pdf

このような無謀ともいえる配当額は、あまりに多くの現預金を貯め込んだ中野冷機に目をつけたファンドの要求によるものと考えられます。この点については、次のリンク先を参照してください。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39397370W8A221C1DTA000/

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損益分岐点(財務諸表と企業分析:その4)


今日は「財務諸表と企業分析」の第4回です。損益分岐点を紹介します。 

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上の動画のポイントをまとめます。


1 変動費と固定費

会社を運営するのにかかる費用は、変動費と固定費に分けることができます。

変動費は、売上とともに変わる費用です。商品の仕入代金、原材料費、水道光熱費、販売促進費などは売上が少ないときに少なく、売上が多いときに多い傾向にあります。これらは変動費の例です。

固定費は、売上にかかわらずかかる費用です。家賃、減価償却費、人件費の大部分などは売上が立たなくても払わなければなりません。これらは固定費の例です。


2 損益分岐点売上高

損益分岐点売上高とは、利益が0になる売上の水準です。利益は売上と費用の差です。ここで、費用は変動費と固定費の和ですから

利益=売上ー(変動費+固定費)=0

少し複雑な式ですので、下の図表で理解しましょう。この図表は横軸に売上、縦軸に売上と費用を取っています。固定費は売上にかかわらずかかる費用ですので、高さが変わらない長方形で表されます。変動費は売上とともに変わる費用ですので、売上が多くなるにしたがい増える三角形で表されます。

売上は横軸・縦軸両方にありますので、45度線になります。損益分岐点売上高は、固定費(長方形)と変動費(三角形)を積み上げた高さと売上高が等しい点から導かれます。




3 式の導出

上のグラフの損益分岐点売上高を求める式を導きましょう。利益が0となる点ですので

売上ー(変動費+固定費)=0

固定費を右辺に移項して

売上ー変動費=固定費

少しトリックを使って



左辺に売上だけ残すと、損益分岐点売上高の式になります。


右辺の()の中は限界利益率です。限界利益率に対する固定費の比率が損益分岐点売上高になります。


4 損益分岐点比率

売上に対する損益分岐点売上高の比率を損益分岐点比率といいます。


この比率が1を下回って低いとき、会社に余裕があります。たとえば、損益分岐点比率が75%であれば、売上が25%下がるまで利益を上げ続けれられることを意味します。

動画の終わりに紹介した損益分岐点比率については、次のリンク先を参照してください。
https://media.rakuten-sec.net/common/dld/pdf/595d32ef5e96ceb735ca03beef4247a8.pdf

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総資本回転率、総資本回転期間(財務諸表と企業分析:その3)


今日は「財務諸表と企業分析」の第3回です。総資本回転率と総資本回転期間を紹介します。 

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上の動画のポイントをまとめます。


1 回転

総資本回転率の「回転」とは、売上が総資本と同額になることを意味します。総資本の周りを売上がぐるぐる回るイメージです。勢いよく何度も回るとき、経営はうまくいっていると判断します。

回転率は、1年度に何回売上が総資本と同額になったかを表します。回転期間は、何か月おきに売上が総資本と同額になったかを表します。どちらも、総資本がどれくらい効率的に売上に結びついたかを表します。


2 総資本回転率と回転期間

総資本回転率とは、総資本に対する売上の比率です。


分母の総資本を期首・期末の平均とするのは、分子の売上が期間の概念だからです。「1年度をとおしていくら売り上げたか」を分子に取りますので、分母もそれにあわせて「1年度の平均的な総資本の額」を取ります。

総資本回転期間とは、総資本回転率の逆数です。


総資本回転期間は月単位で測りますので、逆数に12を掛けます。


3 総資本回転率と総資本利益率(ROA)

総資本利益率(ROA)とは、総資本に対する純利益の比率です。(ここでは、分子に当期純利益を取ります。理論上は、総資本は銀行借入などを含むので、EBITなど支払利息控除前の利益をとる方が望ましいです。)



総資本回転率も総資本利益率も、分母に総資本の期首・期末平均があります。少しだけ式を変形してみましょう。


1つめの分数は売上高純利益率、2つめの分数は総資本回転率です。売上高純利益率が一定だと仮定すると、総資本利益率を高めるためには、総資本回転率を高めなければなりません。この点は○×問題でよく問われているようです。

総資本回転率を高めるには、遊休資産を減らし、売上に結びつく資産を多く保有しなければなりません。昔、大企業の寮やグラウンドであったところが売却され、跡地にマンションが建つことを見ることがありますが、これは総資本回転率を高めるための行動です。

動画の終わりに紹介したブリヂストンについては、次のリンク先を参照してください。
https://www.bridgestone.co.jp/ir/financialdata/assets/index.html

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流動比率、固定比率(財務諸表と企業分析:その2)


今日は「財務諸表と企業分析」の第2回です。流動比率と固定比率を紹介します。 

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

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上の動画のポイントをまとめます。


1 流動と固定

国際会計基準では、資産と負債は、流動項目固定項目に分けて表示するよう定められています。よく用いられる分類基準は次の2つです。

・正常営業循環基準
・1年基準

正常営業循環基準とは、企業の通常の営業活動によって生じる売掛金などを流動資産、買掛金などを流動負債に分類する基準です。1年基準とは、企業の主な営業外の活動によって生じる貸付金のうち決算から1年以内に返済をうけるものを流動資産、借入金のうち決算から1年以内に返済すべきものを流動負債に分類する基準です。

流動資産以外の資産を固定資産、流動負債以外の負債を固定負債に分類します。固定資産の例として、建物、機械装置、土地、ソフトウェアなどがります。これらは1年以上使い続けます。固定負債の例として、長期借入金や社債などがあります。これらは決算から1年を超えた後、返済するものです。

国際会計基準(IAS)第1号に「財務諸表の表示」があります。
https://www.iasplus.com/en/standards/ias/ias1
流動・固定の区別に関する日本語の資料は、次のリンク先の審議事項(3)-5を参照してください。
https://www.asb.or.jp/jp/project/proceedings/y2009/2009-0604.html


2 流動比率

流動比率とは、流動負債に対する流動資産の比率です。


1年以内に払うべきものを、1年以内に現金化できるものでまかなえるかを表します。この値は高い方がよいとされています。一般に、200%以上が望ましいとされています。

流動資産の中には、不良在庫や取り立てが難しい売掛金も含まれているかもしれません。仕掛品や原材料なども製造の過程でミスをして売れなくなってしまうかもしれません。流動資産には現金化できないリスクのあるものも含まれています。このリスクを厳しめにみて、200%という目安が設定されています。

もっと厳格に流動性を調べたいときには、当座比率を用います。当座比率は、流動負債に対する当座資産の比率です。


当座資産は、流動資産から棚卸資産を除いたものです。棚卸資産とは在庫のことです。在庫は、売れる見込みが立たない不動在庫や、保管中に品質が悪くなってしまった不良在庫が混じることがありますので、それを除いた当座資産で流動性を評価します。

より現金化しやすい当座資産で評価しますので、100%以上が望ましいとされています。


3 固定比率

固定比率とは、自己資本に対する固定資産の比率です。



株主の出資金などである自己資本によって、固定資産が賄えているのかを表します。この値は低い方がよいとされています。一般に、100%以下が望ましいとされています。

自己資本の中核をなす資本金と資本準備金は、ふつう取り崩しません。この返済する必要がない資金の範囲内に、現金化しにくい固定資産がおさまれば、財務は健全だと判断します。

(株主からの出資金はタダではありません。返済の必要はありませんが、株主が求める利回りは確保しなければなりません。利回りが確保できなければ、株は値下がりしてしまいます。株が下がると、経営陣は株主総会で退陣を迫られるかもしれません。あるいは、ファンドに安値で買収されてしまうかもしれません。)


4 固定長期適合率

固定比率は、かなり保守的な指標です。多くの企業は、長期借り入れで工場を建てたり機械設備を購入したりしています。そのような経営実態により近い指標として固定長期適合率があります。この指標は固定比率の分母に非支配株主持分と固定負債(長期借り入れの残高)を加えています。


与えられた数値をもとに、複数の指標を計算する5択問題が出るようです。少し大変ですが、複数の指標をあわせて使いこなせるようにしておきましょう。

動画の終わりに紹介したアスクルについては、次のリンク先を参照してください。
https://www.askul.co.jp/kaisya/ir/graph/finance.html#t02
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1702/16/news078.html
https://www.sankei.com/affairs/news/171110/afr1711100020-n1.html

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売上高総利益率(財務諸表と企業分析:その1)


今日は「財務諸表と企業分析」の第1回です。売上高総利益率を紹介します。 

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

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上の動画のポイントをまとめます。


1 売上総利益

売上総利益とは、売上から売上原価を除いたものです。

売上総利益=売上ー売上原価

売上原価とは、仕入代金、製造の手間ひま、水道光熱費など、売上によって増減する費用です。テイクアウトのくら寿司を運営しているくら・コーポレーションの売上原価明細書をみると(有価証券報告書、2018年10月期の売上原価証明書を参照)

売上    1219億円
材料費   517億円
労務費     20億円
経費      30億円
http://www.kura-corpo.co.jp/company/ir/

とあります。材料費はお米🌾、海苔🍙、鮮魚🐟などの仕入代金です。労務費は従業員👩‍🍳の給与です。経費は水道光熱費🚰、運賃🚛、消耗品費、減価償却費、賃貸料です。

売上からこれらを除いたものが売上総利益です。


2 売上高総利益率

売上高総利益率とは、売上に対する売上総利益の比率です。


売上と売上総利益は、損益計算書から値を取ります。


3 原価率を用いた表現

売上総利益は、売上と売上原価の差です。

売上総利益=売上ー売上原価


これを先ほどの式の分子に代入すると



となります。売上原価/売上 を売上原価率と定義すると

売上高総利益率=1ー売上原価率

売上高総利益率を高めるためには、売上原価率を下げる必要があります。製造の現場で、「原価率を抑えろ」と号令がかかるのは売上高総利益率を高めるためです。

くら寿司を例にすると、食品ロスを減らすこと、従業員の配置を適切にすること、水道・電気・ガスの無駄遣いをなくすこと、物流を効率化することなどによって原価率を抑えることができます。

ブランド価値を高めて、原価により多くのマージンを乗せることでも売上高総利益率を高められます。季節限定商品を出したり、有名板前監修のセットを出したりすることはマージンを高める企業努力です。

動画のおわりに紹介した100円ショップセリアの記事と、業種別売上高総利益率(経済産業省)については、次のリンク先資料を参照してください。
http://shogyokai.jp/articles/-/780
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syokozi/result-2/h2c5kaaj.html

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その他のトピックス(株式業務:その8)


今日は「株式業務」の第8回です。この分野でよく出題されるこまごまとした用語や考え方を紹介します。堅苦しい言葉が多くなりますが、試験の問題文もこのような言葉で書かれています。少しずつ慣れていきましょう。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。この単元には動画がありません。

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1 株式の発行

株式を東京証券取引所などの取引書で売買できるようにすることを上場(じょうじょう)といいます。上場するとき、「新たに発行する株式を買いたい」という人を募ることを公募といいます。創業者などが保有している、すでに発行された株式を販売することを売出しといいます。

公募・売出しをするとき、どれくらい売れそうか事前に確認する方法にブックビルディング(BBというものがあります。ブック(Book)とは予約、ビルディング(Building)とは積み上げという意味です。投資者の購入予約を足し合わせて、どれくらい売れそうか確認します。具体的な手順としては

仮条件の設定→需要申告→公開価格の決定→購入申込み

となります。仮条件とは、投資者に打診するとき提示する値幅です。需要申告(BB)期間に「仮条件○○円から△△円」と提示して、何株買いたいか投資者に尋ねます。投資者は仮条件の値幅内で「××円で何株買いたい」と申告します。

会社は、投資者からの申告を集計して、仮条件の値幅内でもっとも適した価格を公開価格にします。需要申告をした投資者は、公開価格を見て最終的に購入申し込みをするか判断します。

2019年3月に上場した日本国土開発の仮条件は490円〜510円、公開価格は510円でした。上場後、株価は600円を超えています。
https://www.n-kokudo.co.jp/news/data/15022019581328.pdf
https://www.n-kokudo.co.jp/news/data/15022019232239.pdf

(公開価格の決め方に、競争入札というもう1つの方式があります。試験では、ブックビルディングとの違いが問われます。テクニックとして、問題文に「入札」という言葉が出てきたら競争入札、それ以外はブックビルディングだと覚えておくと、多くの場合対応できる感じです。)


2 株式の注文

株式を買うとき、私たちは取引所に直接注文を出すことはできません。証券会社を通じて注文を出します。これを委託売買といいます。また、証券会社が自らの売買の注文を出すことがあります。これを自己売買といいます。注文伝票に、委託売買か自己売買かを記します。

売買が成立したとき、契約締結時交付書面を作成し、顧客(投資者)に遅滞なく交付しなければなりません。売買が成立しないときには作成も交付もしません


3 株式の取引

私たち個人投資家の注文は、証券会社を通じて取引所で集約され、取引されます。これを立会内売買といいます。

ファンドなどの大口投資家が取引所で大量の売買をすると、株価が急に上がったり下がったりして市場が不安定になってしまいます。それを避けるために、立会の外で売買することがあります。これを立会外売買といいます。
https://www.jpx.co.jp/markets/equities/tostnet/index.html

バスケット取引は立会外取引の例です。15銘柄以上、かつ1億円以上の売買をまとめて(バスケットに入れて受け渡すように)売買します。くわしくは、下のリンクを参照してください。
https://www.jpx.co.jp/equities/trading/tostnet/01.html

もう1つ、私設取引システム(PTS)というものも触れておかなければなりません。これは、取引所ではなく、証券会社が内閣総理大臣の認可を得て行う株式取引の場です。この記事を書いている時点(2019年3月)には、ジャパンネクストとチャイエックスの2つがあります。

ジャパンネクスト:http://www.japannext.co.jp/ja
チャイエックス:https://www.chi-x.co.jp/


4 株式の決済

株式の売り手から買い手に株式が受け渡されること(Delivery)と、株式の買い手から売り手にお金が受け渡されること(Payment)をあわせて証券決済といいます。

売却代金・購入株式の取りはぐれが起きないように、DeliveryとPaymentを同時または同日中に行うことをDVP決済(Delivery Versus Payment)といいます。日本では、株式のDVPを日本証券クリアリング機構が担当しています。詳細は次のリンク先をみてください。
https://www.jpx.co.jp/jscc/seisan/genbutsu/acceptance_debt/seisan_kikan.html

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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。