今日は「取引所定款・諸規則」の分野から、主要事項を紹介します。この分野は日本取引所のルールやしくみを取り扱います。「協会定款・諸規則」に名前が似ていますが、協会は日本証券業協会のルールやしくみです。紛らわしいのですが、間違わないように気をつけましょう。
試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。
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上の動画のポイントをまとめます。
1 株券の上場
取引所で証券を自由に売買できるようにすることを上場(じょうじょう)といいます。株式会社が株券を上場させるためには、申請をして、取引所の審査を受けなければなりません。まず、形式的な条件が満たされているかを調べ(形式基準)、適合していれば実質審査に入ります。実質審査を通過した会社は上場を許可されます。
東京証券取引所には、東証一部、東証二部、マザーズ、ジャスダックなどの上場区分があります。上場区分を変更することを指定替えといいます。東証二部に上場していた会社が成長して、東証一部の条件を満たせば、一部に指定替えすることができます。条件には、株主数、流通株式数、売買高、時価総額などがあります。
東証一部への指定替えは、東証二部からでなくても構いません。マザーズやジャスダックから東証一部へ指定替えすることもできます。最近指定替えされた会社については、次のリンク先をみてください。
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/transfers/index.html
経営がうまくいかず、上場基準を満たせなくなった会社の株は上場廃止になることがあります。上場基準には株主数、流通株式数、売買高、時価総額などがあります。また、債務超過、虚偽記載、完全子会社化などが生じた会社も上場廃止になります。
これらの事象が生じた日に、いきなり上場廃止になると投資者が混乱してしまいます。まずは監理銘柄、特設注意市場銘柄、猶予期間入り銘柄などに指定して注意喚起をします。取引所が吟味して、上場廃止は免れないと判断されると整理銘柄に指定され、1か月後に上場廃止となります。
最近の監理銘柄等については、次のリンク先を参照してください。
https://www.jpx.co.jp/listing/market-alerts/index.html
2 債券、ETFの上場
債券や上場投資信託(ETF)も取引所で取引することができます。債券のうち、国債証券は上場申請が不要です。地方債証券は上場申請が必要です。試験ではこうした細かい点が問われるようです。
転換社債型新株予約権付社債も上場申請が必要です。発行者に対する基準(発行する会社が上場していること)と、銘柄に対する基準(額面総額や行使条件など)の両方を満たさなければなりません。
ETFも上場申請が必要です。申請は、投資信託委託会社及び受託者が行います。
3 取引の時間帯
東京証券取引所で取引ができる時間帯を売買立会時(ばいばいたちあいじ)といいます。売買立会い時は午前の前場(9:00-11:30)と午後の後場(12:30-15:00)に分かれています。お昼休みがあるのは、世界的にも珍しいです。アメリカのニューヨーク証券取引所にはお昼休みはありません。取引の成立のさせ方は、時間帯によって異なります。
前場と後場の取引はじめ(9:00と12:30)を寄付き、前場と後場の取引おわり(11:30と15:00)を引けといいます。寄付きと引けの取引は、板寄せ方式で成立させます。
寄付きと引け以外のほとんどの時間帯をザラ場といいます。「ザラにある」という言葉を使うことがありますが、取引時間帯のほとんどを占めますのでザラ場といいます。ザラ場の時間帯は、ザラ場の取引は、ザラ場方式で成立させます。
取引所で取引する証券には、1日の値動きが群集心理で大きくなりすぎないように、価格の動きに制限が課されています。これを値幅制限といいます。試験によく出るのは、国債の値幅制限です。国債証券の値幅制限は1円です。
国債の取引については、こちらのリンク先を参照してください。売買高を見るかぎり、取引はとても少ないようです。国債の取引のほとんどは、金融機関どうしの相対取引です。
https://www.jpx.co.jp/equities/products/bonds/trading/index.html
4 注文の種類
取引所が受け付ける注文の種類は成行注文と指値注文に大別されます。成行注文とは、「取引が成立する価格は成り行きにまかせる」タイプの注文です。株式の取引なら、「○○会社の株を××株買いたい(売りたい)」という注文になります。「取引の価格は問わない、すぐに取引したい」ときに出す注文です。
指値注文とは、「取引が成立する価格を指定する」タイプの注文です。株式の取引なら、「○○会社の株を××株、△△円で買いたい(売りたい)」という注文になります。「できるかぎり有利な価格で取引したい」ときに出す注文です。
まとめると
成行注文:銘柄、株数を指定した注文
指値注文:銘柄、株数、価格を指定した注文
すぐに取引を成立させたければ成行を、有利な価格で取引したいときには指値の注文を出します。このような投資家のニーズを反映して、東京証券取引所は、成行注文を、指値注文に優先して執行します。
指値注文は、価格優先の原則と時間優先の原則で優先順位を決めます。
価格優先の原則とは、不利な価格に提出された注文から優先的に執行する原則です。買い手にとって不利な価格は高い価格です。よって、高い価格に出された買い注文から優先して執行します。売り手にとって不利な価格は低い価格です。よって、低い価格に出された売り注文から優先して執行します。
同じ価格に出された注文は、価格優先の原則では順位づけすることができません。それで、時間優先の原則が用いられます。時間優先の原則とは、早い時刻に提出された注文から優先的に執行する原則です。
価格優先の原則によって、投資者は不利な価格に注文を出すよう動機付けられます。時間優先の原則によって、投資者は早く注文を出すよう動機付けられます。このようにルールを定めておけば、取引所が特に何もしなくても、投資者自らが相場を形成するようになります。
取引所に出された注文がどのように執行されるのか、その手順については次回書くことにします。
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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。