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会社の種類、設立(会社法:その1)


今日は「株式会社法概論」の分野から、会社の種類と設立のしかたを紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

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この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

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上の動画のポイントをまとめます。


1 会社の種類

会社法という法律は、会社を株式会社と持分会社に分類しています。持分会社には、合名会社、合資会社、合同会社があります。ここでは、出資者の責任の重さに注目して、これらの会社の違いを説明します。

合名会社は出資者全員無限責任を負う会社です。無限責任とは、会社が経営危機に陥って、会社の財産で債務を返済できなくなったとき、自らの財産で債務を返済するという大変重い責任のことです。

合資会社は出資者が無限責任社員と有限責任社員からなる会社です。有限責任とは、責任の限度が出資額であるということです。たとえば、100万円を出資した人は、100万円を超える責任は負いません。無限責任よりずっと楽な立場です。

合名会社と合資会社には無限責任社員がいます。とてつもなく重い責任を負いますので、無限責任社員になりたがる人はとても少ないです。戦前の財閥中枢にあった三井合名三菱合資は、鉄の結束を誇る一族だからできた会社形態です。現在、合名会社や合資会社の形態をとるのは味噌や醤油の老舗です。老舗の多くは数百年にわたり一族で経営しています。そのような場合に合名、合資の会社形態が選ばれます。

合同会社は出資者全員有限責任を負う会社です。設立と運営が株式会社より簡素ですので、外国企業が日本法人の形態としてよく用います。アマゾンジャパンシスコシステムズは合同会社です。

株式会社も出資者全員有限責任を負う会社です。日本では、会社の大多数が株式会社です。経済産業省の経済センサスによれば、会社の98%が株式会社です。
https://www.stat.go.jp/data/e-census/index.html

中小の株式会社の社長(出資者)は、自宅や土地を銀行に担保として差し出していることが多いので、実際には無限責任に近い立場に置かれています。


2 株式会社の設立

株式会社の設立のしかたには、募集設立と発起設立があります。ここでは、発起設立について説明します。

発起設立とは、設立時に発行する株式を発起人がすべて引き受けて会社をはじめることです。発起人とは、「会社をはじめよう」と言い出した人です。発起人は1人でも構いません。法人(会社など)でも構いません。「よしやろう!」と手を挙げた人🙋‍♂️が資金の全額を用意してはじめます。

資本金の規制はありませんので、1円を出資して会社を設立することもできます。ただ、実際に資本金を1円にしてしまうとで、「この会社は債権者を保護する気がないんだな」と思われ、取引に応じてくれません。少なくとも300万円くらいは用意すべきでしょう。

会社を設立するとき、定款を作成します。定款(ていかん)とは、会社の基本事項を記した会社の憲法のようなものです。具体的には、会社の商号(名前)、会社の本店所在地、発起人の氏名、設立時の出資金額、会社の目的(どんなビジネスをするのか)などを記します。

様々な事情で、会社設立を無効にしたいときは、その会社の取締役または株主が、設立後2年以内に裁判所へ訴えます。


3 株主の権利

有限責任ではあるものの、株式を保有する株主には責任があります。責任を上回る権利がなければ、株主になる人がいなくなってしまいます。株主にはどのような権利があるのでしょうか。

株主の権利には、株主個人のためである自益権と会社全体のためである共益権があります。自益権には、剰余金の配当を受ける権利などがあります。共益権には、株主総会で議案に投票することができる議決権などがあります。

株主総会の決議は多数決を原則としていますが、過半数に満たないものの、ある程度の株数を保有する人(少数株主)にも権利が与えられています。

たとえば、議決権のある株式のうち3%以上を保有する人には、会社の帳簿を閲覧する権利があります。詳しくは下のリンク先資料をご覧ください。
http://www.mofo.jp/topics/legal-updates/legal-updates/79.html


4 大会社と公開会社

会社法の用語に大会社と公開会社があります。

大会社とは、資本金5億円以上または負債額200億円以上の会社です。貸借対照表でみて、規模が一定以上の会社です。これくらいの規模になると直接、間接の取引先がかなりの数に上りますし、債権者も多くなります。それで、会社の会計をみる会計監査人を置きます。また、損益計算書を公告します。

公告は法律用語です。同じ読みの「広告」もありますが、こちらは宣伝するという意味です。公告は、法律にもとづいて、定められた事項を公にすることを意味します。決算公告は、新聞紙上や自社のホームページで行っても構いません。詳しくは下のリンク先の資料をご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji81.html

公開会社とは、譲渡制限がない株式が少しでもある会社です。回りくどい言い方ですが、要は株主総会や取締役会の決議を経ずに、自由に譲ることができる株がある会社です。証券市場に上場している会社はもれなく公開会社です。非上場会社でも、譲渡制限がない株があれば、公開会社です。

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このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。