disable copy

外務員二種の資格を取るために


ここまで、証券外務員二種で出題される14分野について説明してきました。細かい点はさておき、重要だと思われるトピックスの多くをカバーできたと思います。

今日は、ひととおり学んだ人向けに、資格取得のコツをまとめました。試験前にご覧いただければ幸いです。


試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 問題を解こう!

ここまで、30回分の動画をもとに記事を書いてきました。動画に使ったスライドの枚数は210枚ほどになります。かなりの分量、学んだことになります。

動画では、問題の捉え方、解き方のコツを説明してきました。少なくとも数年は変わりにくい問題を中心に取り扱ってきたつもりですが、細かい点については、毎年少しずつ傾向が変わってきています。最新の動向は、最新の問題集などでチェックするようお願いいたします。

何年度にもわたって問題集を発売し続けているところは、この資格試験について相当深く研究しているようです。研究の成果を問題集などに反映させていますので、最短距離の対策は最新の問題集と理解して、活用していきましょう。

外務員の問題には、独特の言い回しがあります。「この言い方は○」「この言い方は×」という暗記の方法もあるようです。体系的な知識もさることながら、点を取るためのテクニックも重視しましょう。


2 メリハリをつけよう!

外務員試験の問題には二種類あります。

・5択問題(5つの選択肢から選ぶ)
・○×問題(文章が正しいか誤っているか選ぶ)

5択問題は1問10点です。大変大きな点が配点されています。問題集をみて、5択問題は入念に準備しましょう。○×問題は1問2点です。問題数は多いのですが、1問の配点は小さいです。70%の得点で合格できますので、戦略的に解答していきましょう。5択問題は少し時間を使っても構いません。落ち着いて答えましょう。○×問題は「何点までなら落とせる」というラインから逆算して、得点を確保するのに使いましょう。

5択問題が出ると予想される株式業務債券業務投資信託協会定款・諸規則は重要な分野になります。


3 試験の当日

試験当日には本人確認書類確認書が必要なようです。持参物などの詳細は、必ずプロメトリックなどのホームページを確認してください。
http://pf.prometric-jp.com/testlist/jsda/jp/index.html

試験当日には、15分前までに会場に入室しなければなりません。当日に必要書類を忘れたり、遅刻したりすると試験を受けられなくなってしまいます。受験料はかなりまとまった額ですので、必ず受験できるよう準備しましょう。

余裕があれば、試験日までに試験会場へ足を運ぶことをお勧めします。多くの試験会場は雑居ビルのような建物の一室のようです。他の人のブログを読むと、自分から声をかけないと案内をされないこともあるようです。事前にどのような雰囲気の場所かみておけば、当日平常心で試験を受けることができます。

証券外務員二種の合格率は、おおよそ50%くらいのようです。いわゆる落とすための試験ではありませんので、しっかり準備して落ち着いて答えられれば、かなりの確率で合格できます。ご自身を信じて頑張りましょう!💪

* * *

ここでひとまず、外務員二種の記事は終わりです。今後は、外務員一種に関する記事を少しずつ書いていきたいと思います。引き続きご覧いただければ幸いです。





その他の分野(金融商品の勧誘・販売に関する法律、セールス業務)


今日はその他の分野から、主要事項を紹介します。その他の分野とは、金融商品の勧誘・販売に関する法律とセールス業務の分野です。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 板寄せ方式の値決め

前回、売買立会時に取引を成立させる方法に、板寄せ方式とザラ場方式があることを紹介しました。ここでは、板寄せ方式の値決めについて説明します。

動画では、取引開始直前の板(注文表)のようすは次のようになっています。真ん中の列は価格を表しています。市場に出された売り注文は左側に、買い注文は右側に集計されています。


例えば、105円に出された売り注文は全部で2万株あります(2万株は複数の投資者が提出した注文の合計と考えましょう)。また、102円に出された買い注文は全部で5万株あります。

「成行」の行は、成行注文の合計を表します。前回説明したように、成行注文は、価格を指定せずに出す注文です。したがって、価格が書いていない行(一番上の行)に注文数を書きます。

板寄せ方式では、まずすべての成行注文を執行します。この例では、売り注文5万株、買い注文2万5千株です。5万個売りに出されて、2万5千個買われるわけですから、この段階で、2万5千株を付け合わせることができました。

第1段階:成行の売りと買いで25,000株

売れ残った買いの成行注文2万5千株は、指値注文と付け合わせます。前回学んだように、指値注文には価格優先の原則があります。これは、不利な価格に出された注文から取引を成立させるという原則です。高い価格に出された買い注文から、低い価格に出された売り注文から取引を成立させます。図表では


売りの成行注文2万5千株、101円に出された売り指値注文6千株、102円に出された売り指値注文5千株を合わせると3万6千株になります。これに対して、105円に出された買い指値注文1万4千株と104円に出された買い指値注文2万2千株を合わせると3万6千株になります。売り買い同数ですので、この段階で、新たに3万6千株の付け合わせができました。

第2段階:成行の売れ残りと指値で36,000株

第2段階までで、板のようすは次のようになりました。


103円に売り指値注文2万株、買い指値注文1万5千株があります。2万個売りに出して1万5千個買われますので、1万5千個売れます。

第3段階:103円の指値で15,000株

結果として、第1段階で25,000株、第2段階で36,000株、第3段階で15,000株の付け合わせができました。合計すると76,000株の取引を成立させることができます。


取引価格は、76,000株すべてについて103円です。東京証券取引所のシステムは、前場と後場のはじめに、取引を成立させうるすべての銘柄について、このような処理を行います。


2 取引時の説明、確認

金融商品の勧誘・販売に関係する法律の分野は、配点が低いことが予想されます。いくつかの問題集の情報を総合すると、300点満点のうち1桁台の配点のようです。よって、試験直前に暗記するのが良いかと思います。

金融商品の販売を業として行うとき、口頭または書面で重要事項を説明しなければなりません。重要事項とは、元本の欠損損失の恐れがあることや権利行使期間に制限があることなどです。

説明を怠ると、故意又は過失を問わず、説明義務違反となります。

顧客からの預かり財産が犯罪による収益による疑いがあるときは、速やかに行政庁へ届出なければなりません。放置してはいけません。

取引の記録は7年保存しなければなりません。(動画では5年と書いてしまいましたが、正しくは7年です。お詫びして訂正いたします🙇‍♂️)


3 外務員の業務

セールス業務の分野は、配点が低いことが予想されています。いくつかの問題集の情報を総合すると、300点満点のうち10点くらいの配点のようです。よって、この分野も試験直前に暗記するのが良いと思います。

外務員は、あくまで顧客の投資者にアドバイスをする立場です。投資の最終決定は投資者がします。投資者の的確な意思決定をサポートするために次のようなことに気をつけます。

・金融商品の特徴を十分に理解してもらう
投資目的資金量にふさわしくない投資を再考してもらう
・将来の値動きについて断定的判断を提供してはならない

実際に勧誘等をするとき、このあたりの線引きはとても難しいのですが、原則にしたがうことが重要だと思います。


4 倫理コードとIOSCO行動規範

このトピックもセールス業務の分野ですので、試験直前に暗記することをお勧めします。IOSCO(証券監督者国際機構)が行動規範を、日本証券業協会が倫理コードを定めています。IOSCOについては、次のリンク先資料をご覧ください。
https://www.fsa.go.jp/inter/ios/ios_menu.html

IOSCOの行動規範は、金融商品取引業者が次のようなことに気をつけるべきだとしています。

・顧客の最大の利益及び市場の健全性を図るべく行動すること
情報の十分な開示利益相反の回避に努めること

日本証券業協会の倫理コードには

・投資者の知識経験目的財産を把握しアドバイスすること
誠実かつ公正に業務を遂行、自己責任原則を確立すること

が記されています。このあたりのことは、協会定款・諸規則の分野と重なります。多くの問題に当たることで、「これくらいが常識の範囲内かな」という相場観が持てると答えやすくなると思います。

今日は複数の分野を取り上げました。問題集に書いてある予想配点をよく見て、それと比例する形で勉強時間を配分すると効率的だと思います。工夫してみてください。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。


取引所定款・諸規則


今日は「取引所定款・諸規則」の分野から、主要事項を紹介します。この分野は日本取引所のルールやしくみを取り扱います。「協会定款・諸規則」に名前が似ていますが、協会は日本証券業協会のルールやしくみです。紛らわしいのですが、間違わないように気をつけましょう。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 株券の上場

取引所で証券を自由に売買できるようにすることを上場(じょうじょう)といいます。

株式会社が株券を上場させるためには、申請をして、取引所の審査を受けなければなりません。まず、形式的な条件が満たされているかを調べ(形式基準)、適合していれば実質審査に入ります。実質審査を通過した会社は上場を許可されます。

東京証券取引所には、東証一部、東証二部、マザーズ、ジャスダックなどの上場区分があります。上場区分を変更することを指定替えといいます。東証二部に上場していた会社が成長して、東証一部の条件を満たせば、一部に指定替えすることができます。条件には、株主数、流通株式数、売買高、時価総額などがあります。

東証一部への指定替えは、東証二部からでなくても構いません。マザーズやジャスダックから東証一部へ指定替えすることもできます。最近指定替えされた会社については、次のリンク先をみてください。
https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/transfers/index.html

経営がうまくいかず、上場基準を満たせなくなった会社の株は上場廃止になることがあります。上場基準には株主数、流通株式数、売買高、時価総額などがあります。また、債務超過、虚偽記載、完全子会社化などが生じた会社も上場廃止になります。

これらの事象が生じた日に、いきなり上場廃止になると投資者が混乱してしまいます。まずは監理銘柄、特設注意市場銘柄、猶予期間入り銘柄などに指定して注意喚起をします。取引所が吟味して、上場廃止は免れないと判断されると整理銘柄に指定され、1か月後に上場廃止となります。

最近の監理銘柄等については、次のリンク先を参照してください。
https://www.jpx.co.jp/listing/market-alerts/index.html


2 債券、ETFの上場

債券や上場投資信託(ETF)も取引所で取引することができます。

債券のうち、国債証券は上場申請が不要です。地方債証券は上場申請が必要です。試験ではこうした細かい点が問われるようです。

転換社債型新株予約権付社債も上場申請が必要です。発行者に対する基準(発行する会社が上場していること)と、銘柄に対する基準(額面総額や行使条件など)の両方を満たさなければなりません。

ETFも上場申請が必要です。申請は、投資信託委託会社及び受託者が行います。

3 取引の時間帯

東京証券取引所で取引ができる時間帯を売買立会時(ばいばいたちあいじ)といいます。売買立会い時は午前の前場(9:00-11:30)と午後の後場(12:30-15:00)に分かれています。お昼休みがあるのは、世界的にも珍しいです。アメリカのニューヨーク証券取引所にはお昼休みはありません。

取引の成立のさせ方は、時間帯によって異なります。

前場と後場の取引はじめ(9:00と12:30)を寄付き、前場と後場の取引おわり(11:30と15:00)を引けといいます。寄付きと引けの取引は、板寄せ方式で成立させます。

寄付きと引け以外のほとんどの時間帯をザラ場といいます。「ザラにある」という言葉を使うことがありますが、取引時間帯のほとんどを占めますのでザラ場といいます。ザラ場の時間帯は、ザラ場の取引は、ザラ場方式で成立させます。

取引所で取引する証券には、1日の値動きが群集心理で大きくなりすぎないように、価格の動きに制限が課されています。これを値幅制限といいます。試験によく出るのは、国債の値幅制限です。国債証券の値幅制限は1円です。

国債の取引については、こちらのリンク先を参照してください。売買高を見るかぎり、取引はとても少ないようです。国債の取引のほとんどは、金融機関どうしの相対取引です。
https://www.jpx.co.jp/equities/products/bonds/trading/index.html


4 注文の種類

取引所が受け付ける注文の種類は成行注文と指値注文に大別されます。

成行注文とは、「取引が成立する価格は成り行きにまかせる」タイプの注文です。株式の取引なら、「○○会社の株を××株買いたい(売りたい)」という注文になります。「取引の価格は問わない、すぐに取引したい」ときに出す注文です。

指値注文とは、「取引が成立する価格を指定する」タイプの注文です。株式の取引なら、「○○会社の株を××株、△△円で買いたい(売りたい)」という注文になります。「できるかぎり有利な価格で取引したい」ときに出す注文です。

まとめると

成行注文:銘柄、株数を指定した注文
指値注文:銘柄、株数、価格を指定した注文

すぐに取引を成立させたければ成行を、有利な価格で取引したいときには指値の注文を出します。このような投資家のニーズを反映して、東京証券取引所は、成行注文を、指値注文に優先して執行します。

指値注文は、価格優先の原則と時間優先の原則で優先順位を決めます。

価格優先の原則とは、不利な価格に提出された注文から優先的に執行する原則です。買い手にとって不利な価格は高い価格です。よって、高い価格に出された買い注文から優先して執行します。売り手にとって不利な価格は低い価格です。よって、低い価格に出された売り注文から優先して執行します。

同じ価格に出された注文は、価格優先の原則では順位づけすることができません。それで、時間優先の原則が用いられます。時間優先の原則とは、早い時刻に提出された注文から優先的に執行する原則です。

価格優先の原則によって、投資者は不利な価格に注文を出すよう動機付けられます。時間優先の原則によって、投資者は早く注文を出すよう動機付けられます。このようにルールを定めておけば、取引所が特に何もしなくても、投資者自らが相場を形成するようになります。

取引所に出された注文がどのように執行されるのか、その手順については次回書くことにします。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。



証券税制


今日は「証券税制」の分野から、その細則を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 所得の区分

税法では、所得を10に区分しています。そのうち、外務員試験によく出る4つを紹介します。

・譲渡所得
・配当所得
・利子所得
・事業所得

譲渡所得とは、証券のキャピタルゲインのことです。キャピタルゲインは証券を売買することによって得られます。配当所得とは、株式の配当のことです。利子所得とは債券(社債、国債など)や銀行預金の利子のことです。事業所得とは、事業的規模で継続的に行う証券投資から得られる所得です。

ほかの6つの所得区分については、次のリンク先から確認してください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1300.htm


2 税率

所得に適用される税率は、所得の区分によって異なります。譲渡所得、配当所得、利子所得には次の税率が適用されます。

住民税5%+所得税及び復興特別所得税15.315%20.315%

小数点以下の「.315」は復興特別所得税です。この税率は、所得税15%の2.1%として計算されます。

15%×2.1%=0.315%

この税は平成49年(令和18年?)まで適用されます。今後しばらくあり続けるということですね…

事業所得については、法人税の決まりに則って税率が決まります。


3 納税

納税の仕方の1つに確定申告があります。毎年2月ごろ、次のリンク先のような確定申告の広告を見ると思います。
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201301/1.html

証券投資で儲けたときも確定申告をします。最近は納税者自ら税額を計算して申告することもあります。そのとき、収入金額というものを確定させなければなりません。源泉徴収された税がある場合には、税引き前の金額に基づいて計算します。

配当控除を受けたい人は、総合課税にしてもらうために確定申告をすることがあります。課税所得1,000万円以下は10%、1,000万円超の部分は5%の控除となります。

課税所得の総額700万円弱くらいが損益の分岐点になっているようです。課税所得が分岐点以下なら確定申告をすると税率が低くなり、分岐点を超えると税率が高くなるようです。詳しくは次のリンク先を参照してください(最新の税制については、税務署に確認をお願いします。私は税理士ではありませんので…)
https://www.smbcnikko.co.jp/service/mailmagazine/1402/r40/150106/top.pdf

譲渡所得の確定申告をするとき、書類を書きます。次のリンク先は書類の雛形です。これに間違いなく記入するのは大変です…
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/a048.pdf

また、確定申告の書類提出も大変です。確定申告の時期、税務署はとても混雑しています。悪くすると、1分くらいで終わる書類確認のために、2時間3時間立ちっぱなしで列に並ぶこともあります。還付を受ける人はそれでも並ぶのでしょうが、税を上乗せして納めないといけない人にとっては苦痛以外の何ものでもありません。

確定申告でこうした苦痛を感じたくない人は、源泉徴収の特定口座を開設します。開設するとき、特定口座源泉徴収選択届出書を提出します。源泉徴収の特定口座は、金融商品取引業者ごとに開設することができます。

(野村證券と大和証券に口座を開いて取引しているのであれば、野村證券で1つ、大和証券で1つ源泉徴収の特定口座を開設できます。)


4 譲渡課税額の計算

外務員の試験では、譲渡課税の計算がよく出ます。ここでは、動画で用いた例題で説明します。

例)ある会社の株を、平成31年1月に単価2,000円400株、平成
31年2月に単価2,200円600株購入し、平成31年3月に単価2,620円1,000株売却した。税額はいくらか(1円未満を切り捨て)。

このような問題が出題されます。数字がたくさんあって大変ですが、少しずつ計算を進めましょう。

まず、1株当たり取得額を計算します。これは、購入代金の総額を購入株数で割って求めます。


この例題では、1月と2月に株を買っています。それぞれの月の単価×購入株数を計算して購入代金の総額を計算します。数値を代入すると


分子の第1項は1月に2,000円で400株購入したこと、第2項は2月に2,200円で600株購入したことを表します。分母の400+600は購入した株数の合計です。計算すると、1株当たり取得額は2,120円になります。

キャピタルゲインは売却額と取得額の差額です。売却時の株価は2,620円、売買株数は1,000株ですから

(2,620ー2,120)×1,000=50万円

キャピタルゲインは50万円です。これに20.315%の税率が適用されます。すなわち

50万円×20.315%=101,575円

50万円というまとまった額の儲けがあると、10万円を超える税金を納めなければなりません。かなりシビアですね…


5 上場株式の相続税の評価

たくさんの株を保有している親を持つ人もいるかと思います。その人は相続が発生したとき税を納めなければなりません。相続税の税額を計算するとき用いる株の評価額は次のように特定します。

課税時期(相続日)の株価と、課税時期の属する月以前3か月の終値平均を比べ、最低の株価を評価額とします。言葉が難しので、例題で考えましょう。

例)平成31年1月の終値平均が1,250円、平成31年2月の終値平均
1,050円、平成31年3月の終値平均が1,400円、課税時期の3月5日
の終値が1,200円であるとき、この上場株式の評価額はいくらか。

相続が発生した日が3月5日で、その日の株価が終値で1,200円でした。この株価水準と1月、2月、相続が発生した3月の終値平均を比べます。最も低いのは2月の終値平均(1,050円)です。これが評価額となります。

証券投資を実際にやってみると、思っていたより難しく楽ではないことがわかります。その成果に税が課されるのは気詰まりですが、納税の義務は果たさなければなりません。税額がどれくらいになるのか、外務員の試験範囲くらいの知識は持つべきなのでしょう。

上でも書きましたが、私は税理士ではありません。最新の税制や実際の税額などについては、税務署や税理士にお問い合わせください。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。





協会定款と諸規則の細則(協会定款・諸規則:その2)


今日は「協会定款・諸規則」の分野から、その細則を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 従業員の禁止行為

日本証券業協会は、証券会社等の従業員による次のような行為を禁じています。

まず、顧客の投資者が売買したり名義書換えをするとき、自己、架空、他人の名義を使うことは禁止されています。「自己の名義」とは、証券会社等に勤める従業員の名義ということです。他の人の名義で売買したり名義書換えしたりすることは禁じられています。

顧客と損益を共にしたり、顧客とお金や証券の貸し借りをしたり、顧客の取引の相手方になることも禁じられています。「顧客と損益を共にする」とは、顧客が儲けたときその一部を受け取り、損したときその一部を蒙ることを意味します。証券会社等の従業員は、顧客とお財布を一緒にして損得勘定してはいけません。

また、社内と広告審査担当の審査を受けずに、従業員限りで顧客に広告や景品を提供することも禁じられています。たかが景品といっても、見方を変えれば利益供与になってしまいます。それを一従業員の判断でしてしまうと、上で説明した「顧客と損益を共にする」状態に限りなく近づいてしまいます。それを事前に避けるために、社内の広告審査担当の審査を受けます。


2 従業員の不適切行為

日本証券業協会は、従業員が次のような行為をしないよう指導又は監督をするよう証券会社等に求めています。こちらは禁止行為と異なり、確認ミスやうっかりをなくしましょうという努力義務です。

まず、証券取引の性質又は条件について、顧客に誤認させないよう指導しなければなりません。証券取引について研修をするなどして、従業員が顧客の投資者に間違いないく説明できるように努めなければなりません。

顧客が注文した証券の銘柄、価格、数量、注文の種類を確認せずに執行しないように気をつけなれけばなりません。顧客の注文を執行する際、過失により事務処理を誤らないよう、気をつけなければなりません。

2005年、ジェイコムという会社の株の取次で誤発注が起きました。「61万円で1株売る」という注文を「一円で61万株売る」ものとして発注してしまいました。株価は短期に暴落と暴騰をしました。下の1つめのリンク先には、被害総額400億円と書いてあります。2つめのリンク先には、当時の板の様子を表す動画があります。
http://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200714.html
https://www.youtube.com/watch?v=bH9iFQc294E

たった一回の誤発注で400億円の損失を出すこともありますので、証券会社にとっても死活問題です。


3 証券外務員二種の業務範囲

外務員の資格を取得しただけでは、外務行為を行うことはできません。勤め先の証券会社などが協会に登録してから外務行為を行うことができます。

登録後は、知識をアップデートするために、毎年社内研修を受ける必要があります。さらに、5年に1回日本証券業協会の資格更新研修も受けなければなりません。一度取得した外務員の資格は、期限切れとなることはありませんが、法律や制度は年々少しずつ変わりますので、社内外の研修を受けることになります。

外務員資格の取得を目指しているみなさんはご存知かと思いますが、外務員には一種と二種があります。二種を合格した後、一種を受験します。一種の方が上位の資格です。

したがって、一種まで取得している人の業務範囲は、二種だけを持っている人の業務範囲より広くなります。

二種外務員は、株式、社債、国債、投資信託の受益証券などを取り扱うことができます。一種外務員は二種の業務範囲に加えて、新株予約権、デリバティブ、カバードワラントといった派生証券も取り扱うことができます。(信用取引については、一種外務員が同行すれば二種外務員も取り扱うことができます。)

一種と二種の問題集を比べると、3分の2くらいが同じ分野であることがわかります。一種の問題集は、二種の出題分野に信用取引、先物取引、オプション取引、そして特定店頭デリバティブ取引等が加わります。

二種を取得できた人は、それほどの苦労なく一種も取得することができます。その意味でも二種の試験範囲をしっかり固めることはとても重要になります。


4 協会員の構成

日本証券業協会は協会員によって構成されます。協会員は会員、特別会員、特定業務会員からなります。

証券会社など、金融商品取引法28条に定める第一種金融商品取引業を営む法人は、会員に分類されます。銀行、生損保、短資会社、証券金融など証券の取引に関係する金融機関は、特別会員に分類されます。特定店頭デリバティブのIDB(インターディーラー・ブローカー)などは特定業務会員に分類されます。

下のリンク先から、現在の協会員数をみると次のようになります。

会員:265社
特別会員:205社
特定業務会員:8社
http://www.jsda.or.jp/kyoukaiin/kyoukaiin/index.html

証券取引を円滑ならしめるために努力している多くの協会員の集まり、それが日本証券業協会です。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。




協会定款と諸規則の概要(協会定款・諸規則:その1)


今日は「協会定款・諸規則」の分野から、その概要を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 概要

証券会社の業界団体に日本証券業協会というものがあります。この協会は、金融商品取引法67条の2にもとづき、内閣総理大臣の認可を得て設立された法人です。

協会は、株式会社と同じように、定款を定めています。定款の6条には、「金融商品取引業の健全な発展を図り、もって投資者の保護に資する」と協会の目的が定められています。これは、金融商品取引法67条の

有価証券の売買その他の取引及びデリバティブ取引等を公正かつ円滑にし、並びに金融商品取引業の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする

という条文を受けたものと思います。協会は、定款の他にもたくさんの規則を定めています。それらの諸規則は、下のリンク先に示されるように、自主規制、統一慣習、紛争処理にグループ分けされています。
http://www.jsda.or.jp/about/kisoku/index.html


2 顧客との接し方

金融商品取引法にも、協会定款にも定められているように、証券会社は投資者本位の事業活動に努めなければなりません。具体的には、次のような事柄に気をつけて顧客の投資者と接しなければなりません。

まず、顧客に投資は自己責任であることを理解してもらうことが重要です。顧客自身の資金を自らの責任で運用するのが証券投資です。証券会社はアドバイスをしますが、投資判断は顧客自身がしなければなりません。

これは、「証券会社は何もしなくても良い」ということではありません。証券会社は顧客の投資経験投資目的資力をみて、アドバイスをする必要があります。さらに、顧客の適切な判断を助けるべく、十分に説明しなければなりません。


3 取引開始前

ここからは、顧客の投資者が投資する前、投資するとき、投資した後に証券会社が何をすべきかを説明します。

取引開始前に、顧客カードを作成します。これは、適切な投資勧誘をするための基礎資料です。このカードには氏名投資経験投資目的資産・年収などを記します。証券会社に口座を持っている人は、口座開設の申し込みをするとき、これらの情報を書いたと思います。それを証券会社側でカード化しています。

これらの情報は、上に書いた「顧客の投資経験投資目的資力をみて、アドバイスをする」ために用います。

(試験では、「顧客カードに住所のほか本籍も書く」というフレーズが出ることがあります。○×問題では、×が正答となります。住所は書きますが、本籍は書きません。)

また、インサイダー取引規制の対象になる顧客については、内部者登録カードも作成します。このカードには、氏名、会社名、役職名、所属部署などを記します。どの会社のどの部署で働いているのかが分かれば、事前にどのような情報が得られるのかが分かります。

社会的地位が高い人には多くの情報が入ってきます。このカードによって、そうした人もインサイダー取引ではない、健全な取引をしていることを証明することができます。


4 取引時

顧客の投資者は、証券会社を介して証券を売買します。自ら証券取引書に足を運んで証券を売買することはできません。

よって、顧客は証券を買う前に購入代金の一部または全部を証券会社に預けておかなければなりません。また、証券を売る前に売却する証券の一部または全部を証券会社に預けておかなければなりません。証券会社は、資金や証券を預かっていない顧客の注文を取り次ぐことはできません。

顧客から預かった資金や証券を保管する方法には、混蔵寄託契約など
いくつかあります。昔は紙ベースの証券がありましたので、預かり方にも意味があったと思いますが、今は資金も証券も電子化されていますので、以前より意味が薄れてきています。ただし、試験問題には出てきますので一応抑えておきましょう。

また、当たり前のことですが、証券会社など協会員は顧客に名義貸しをしてはいけません。


5 取引後

顧客が証券を売買した後、照合通知書というものを作成します。この書類には、証券(株式、社債、国債、投資信託)の残高、資金の残高をすりします。残高が0であっても、残高が0になってから1年に満たなければ「残高0」を通知します。

照合通知書は、証券会社の検査、監査又は管理を担当する部門が作成します。この書類作成部門は試験で問われるようですので覚えておきましょう。

作成した照合通知書は、顧客の区分にしたがって、それぞれに定める頻度で通知します。証券会社に口座を持っている人は定期的に受け取っていると思います。これは、協会の規則にしたがって行う証券会社の業務の1つです。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。

義務、禁止事項等(金融商品取引法:その2)


今日は「金融商品取引法」の分野から、義務と禁止事を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 義務

金融商品取引業者とそこで登録された外務員には、最良執行義務があります。これは、複数の市場で証券が取引されているとき、投資者にとって最も有利な市場で取引をしなければならないということです。

証券会社のホームページをみると、最良執行方針が掲げられています。下のリンク先から、大和証券の最良執行方針をみてください。最も取引が盛んな、流動性の高い市場に注文を取り次ぐと書いてあります。
http://www.daiwa.jp/policy/execution/

金融商品取引業者は、あらかじめ最良執行方針等を記した書面を顧客の投資者に交付しなければなりません。

金融商品取引業者とそこで登録された外務員は、顧客投資者の損失を補てんしてはいけません。顧客が業者に損失補てんを要求しただけでは処罰されませんが、業者や外務員が顧客に損失補てんを約束したり、実際に補てんを実行してしまうと罰せられます。損失補てんは第三者を介したものでも罰せられます。


2 不公正取引規制

金融商品取引業者とそこで登録された外務員は不公正な取引をしてはいけません。不公正な取引には風説の流布、仮装売買、馴合売買などがあります。

風説の流布とは、会社の業績や株価などについて、根拠のない噂を広めることです。たとえば「まだ報じられていないが、この会社は間もなく倒産する。今のうち株を売りましょう」とネットのSNSなどで煽り投稿をしておいて、売りが殺到し株価が暴落したタイミングで買い占めることは罰せられます。10年以下の懲役になりかねませんので絶対にやらないようにしましょう。

仮装売買とは、権利の移転や金銭の授受を目的としない取引のことです。たとえば、投資者が自らの買い注文と売り注文をぶつけて取引を成立させる「にぎやかし」をすることで、他の投資家をおびき寄せて利益を得ることは罰せられます。

馴合売買とは、売り手と買い手が通謀した取引のことです。「この株を、いつ、いくらで売買しよう」と示し合わせて売買し、値を吊り上げたりすることは罰せられます。

現在は、取引の全てが電子情報として記録されますので、こうした不公正取引はすぐに特定されます。くれぐれも関わらないようにしましょう。下のリンク先の資料を参照してください。2つめの資料にあるストリームという会社の株の値動きについては、3つめの資料(チャート)をみてください。2014年に急騰しています。
https://www.fsa.go.jp/sesc/support/hukousei/hukousei.htm
https://www.fsa.go.jp/sesc/message/20171228-1.htm
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=3071.T&ct=z&t=ay&q=c&l=off&z=m&p=m65,m130,s&a=v


3 内部者取引規制

内部者取引規制は、いわゆるインサイダー取引規制です。インサイダー取引とは、会社関係者が、重要事実を利用し、公表前に取引することです。

会社関係者とは、会社の役員会計士顧問弁護士使用人(従業員)などのことです。これらの立場にある人は、いわゆる「中の人」として、他の人より早く情報を知ることができます。それを利用して取引すると、他の人より有利になってしまいます。

重要事実とは、新株を発行すること、株式を分割すること、資本金の減少、会社の業績予想などです。どれも株価に大きな影響を与えますので、これらの情報を利用して取引すると、他の人より有利になってしまいます。

公表とは、有価証券報告書や有価証券届出書が公衆の縦覧に供せられたとき(みんながみられるようになったとき)や、2つ以上の報道機関に対して公開し、それから12時間経過したときを意味します。

立場のある人は、なかなか個別株を売買するのは難しいです。それで、ETFを買って保有し続けたり、株式累積投資を活用したりしています。


4 開示規制

証券を発行するとき、証券を流通させるとき、発行体は情報を開示しなければなりません。

株式、社債、投資信託の受益証券を発行するとき、目論見書を公表します。これは、「証券を発行して集めた資金で何をするのか、行う事業によって、どのように投資家に報いるのか」をまとめた書類です。私たち個人投資家は、証券に投資する前に目論見書を読むべきです。

株式を流通させるときも、いくつかの書類を公表しなければなりません。決算を終えて3か月以内に、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出します。経営状態が急変したときには、臨時報告書を提出します。試験では、「経営状態が急変したとき訂正報告書を提出する」などと出てきますが、このような文が○×問題で出たら、×が正答となります。

発行済株式総数の5%超を保有する投資者は、保有比率が5%を超えてから5日以内大量保有報告書を提出します。大株主は株主総会で大きな発言力を持ちますので、それが誰なのか分かるようにしておきます。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。




業者と外務員(金融商品取引法:その1)


今日は「金融商品取引法」の分野から、業者と外務員を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 有価証券

金融商品取引法の2条1項は、多くの有価証券を列挙しています。そのうち、外務員試験によく出るのは国債、地方債、株券、社債券、投資信託の受益証券、CP(コマーシャル・ペーパー)などです。

金融商品取引法の2条2項は、みなし有価証券を列挙しています。合名・合資・合同会社の社員権などはみなし有価証券にあたります。

注意していただきたいのは、小切手は金融商品取引法上の有価証券ではないということです。小切手を有価証券とみなす場合もあるようですが、私たちが受験する外務員試験では、有価証券ではないと覚えておきましょう。


2 金融商品取引業

金融商品取引業には、内閣総理大臣の登録を受けて営むものと、内閣総理大臣の認可を得て行うものがあります。登録を受けて営むものに媒介、取次ぎ、代理などがあります。

媒介とは、他人どうしの取引が成立するよう尽力することです。

取次ぎとは、自己の名をもって委託者の計算で売買することです。「委託者の計算で」とは、委託者の資金でという意味です。私たちが証券会社の窓口でお願いした株式の買い注文は、証券会社の名で証券取引所に提出されます。このような業務を媒介といいます。(証券会社が他の業務を営むこともあります。)

代理とは、委託者の名をもって委託者の計算で売買することです。たとえば、私たちに投資のアドバイスだけをする投資顧問会社は、代理業のみを営んでいるといえます。(投資顧問が他の業務を営むこともあります。)

内閣総理大臣の認可を得て行うものに私設取引システム(PTS)があります。黎明期にはいくつかPTSがありましたが、現在はジャパンネクストとチャイエックスの2つに集約されています。2つのPTSについては、下のリンク先をご覧ください。
http://www.japannext.co.jp/ja
https://www.chi-x.co.jp/


3 金融商品仲介業

金融商品仲介業は、内閣総理大臣の登録を受けて営みます。この業は、法人も個人も営むことができます。

法人として金融商品仲介業を営むものに銀行があります。近年は銀行の窓口で投資信託などの金融商品を勧められることがあります。そのような業務は、銀行が金融商品仲介業として営んでいます。

最近はAIを駆使した投資戦略を私たち個人投資家にアドバイスする企業もあります。こうしたアドバイザー業務も金融商品仲介業です。

個人で金融商品仲介業を営む人をIFAといいます。保険の代理店を営む個人が投資信託も販売していることがあります。こうした業務は金融商品仲介業です。

金融商品仲介業を営む法人や個人は、代理をすることはできません。ここで代理とは、顧客のお金や証券を預かる業務です。


4 外務員

金融商品の取引、勧誘をすることを外務行為といいます。外務行為をできる人を外務員といいます。

このブログのご覧になる人の多くは、外務員を取得したい人だと思います。外務行為をするには、外務員試験に合格するだけではいけません。例外なく登録する必要があります。(試験には「ある場合には登録しなくても良い」といったフレーズが出てきます。このような問題では、×が正答です。)

外務員は、金融商品取引業者に代わり、一切の裁判外の行為を行います。一切の裁判外の行為とは、簡単にいうと業務全般のことです。さすがに裁判の法廷では弁護士に頼りますが、その他の業務全般は、外務員が行うということです。

金融商品取引業者は、外務員が負った債務の直接履行責任を持ちます。雇っていたトレーダーが大損したとき、その債務は証券会社が持つということです。

就活の口コミサイトなどで「証券会社は厳しい、ブラックだ」という評判を見聞きします。しかし、会社側から見れば、外務員となる職員は例外なく会社の看板を背負っていますので、自覚をもった行動を促すのは当然だとも言えます。また、外務員である従業員の損もかぶるわけですから、一定以上の品質を求めるのもやむを得ません。高い倫理観がない人、能力が十分でない人にとって、厳しい仕事にみえるのは仕方ないかもしれません。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。




会社の機関(会社法:その2)


今日は「株式会社法概論」の分野から、会社の機関を紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 株主総会

株式会社の意思決定をする人や人の集まりを機関といいます。機関のうち、最も重要なものが株主総会です。株主総会では、会社に出資している株主が会社の重要事項を決議します。

株主総会は大変重要な集まりですので、議事録を保管することになっています。本店原本を10年支店写しを5年保管します。

株主総会の決議には、普通決議、特別決議、特殊決議があります。このうち普通決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で成立します。取締役監査役などを選任するとき、剰余金の配当額を決めるとき、計算書類の承認を得るときなどにこの決議が用いられます。

特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。定款を変更するとき、会社を解散するとき、会社を合併するときなどにこの決議が用いられます。

細かい用語がたくさんありますが、外務員試験では、大まかに

に関すること  → 普通決議
組織に関すること → 特別決議

と覚えておきましょう。


2 組織再編

特別決議が必要となる組織再編のうち、外務員試験によく出るのは合併と分割です。

合併とは、複数の会社が1つの会社になることです。元の会社をすべて解散し、新たに会社を設立するとき、新設合併といいます。元の会社のうち1社を存続させ、そこに他の会社を吸収させるとき、吸収合併といいます。

分割とは、会社の一部を切り離して別の会社にすることです。切り離した会社の一部を新たな会社としてスタートさせるとき、新設分割といいます。切り離した会社の一部を今ある会社が吸収するとき、吸収分割といいます。

会社の合併、分割における新設、吸収とは

新設 → 組織再編のとき新たな会社を作る
吸収 → 組織再編のとき今ある会社を活用する

とまとめると覚えやすいと思います。


3 役会、委員会

会社法は柔軟な機関設計を認めています。会社を運営する人たちにとっては便利ですが、資格試験を受ける私たちにはとても複雑になってしまっています。ここでは、外務員試験によく出るものだけ紹介します。

役会、委員会のメンバーは株主総会で選ばれます。総会で選ばれた取締役3人以上で構成されるのが取締役会です。取締役会は、代表取締役1名を選出します。

テレビドラマで、会議室に重役が集まって話し合う場面がありますが、大企業の取締役会はメンバーは10人を超えることもあります。私たちが「社長」と呼ぶ人の多くは、代表取締役です。

総会で選ばれた3人以上の監査役で構成されるのが監査役会です。監査役会メンバーのうち半数以上は社外の人でなくてはいけません。これは、監査役会が、「取締役会が本当に株主のために行動しているか」を監視する会であるためです。監査役の多数が社内の人であれば、株主ではなく取締役のいいなりになってしまうかもしれません。

取締役会の監視機能を強化し、また経営と執行を分離した機関設計に指名委員会等設置会社というものがあります。これは、取締役の選任案を出す指名委員会、取締役の報酬案を出す報酬委員会、業務の執行をみる監査委員会を設置する会社です。これらの委員会はいずれも3人以上
の委員によって構成され、その過半数は社外の人です。

この記事を書いている時点で、指名委員会等設置会社は71社あります。詳しくは下のリンク先からリストをみてください。
https://www.jacd.jp/news/gov/jacd_iinkaisecchi.pdf
http://diamond.jp/articles/-/73353?page=2


4 証券の発行

株主の多くは、私たちのように他の仕事を持っていますので、会社の経営を細かくみることはできません。それで、会社経営の大部分は、総会で選んだメンバーで構成される取締役会で決めます。

取締役会は、証券の発行、株主総会の招集、代表取締役の選任、株式の分割などを決議することができます。これらのうち、証券の発行について説明します。

取締役会は、株式の発行を決議することができます。株式の発行のしかたに株主割当て、公募、第三者割当てがあります。また、社債の発行も決議することができます。社債を発行するとき、元利払いを管理する社債管理者を置くのが原則です。銀行信託銀行などが社債管理者になれます。転換社債型新株予約権付社債の発行も決議することができます。

これらの決定が取締役会に委ねられているのは、状況に応じて資金を調達できるようにするためです。資金調達のたびに株主総会を開いていては、時間と手間がかかってしまいます。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。




会社の種類、設立(会社法:その1)


今日は「株式会社法概論」の分野から、会社の種類と設立のしかたを紹介します。

試験のキーワードになりそうな用語を赤色で示します。その他の色は、理解を助けるためにつけます。

* * *

この単元のYouTube動画を作りました。ご覧ください。(若干の生活音や息継ぎ音が入ることがあります。音量を調節してみてください。)

(よろしければ、こちらからチャンネル登録お願いします)

* * *

上の動画のポイントをまとめます。


1 会社の種類

会社法という法律は、会社を株式会社と持分会社に分類しています。持分会社には、合名会社、合資会社、合同会社があります。ここでは、出資者の責任の重さに注目して、これらの会社の違いを説明します。

合名会社は出資者全員無限責任を負う会社です。無限責任とは、会社が経営危機に陥って、会社の財産で債務を返済できなくなったとき、自らの財産で債務を返済するという大変重い責任のことです。

合資会社は出資者が無限責任社員と有限責任社員からなる会社です。有限責任とは、責任の限度が出資額であるということです。たとえば、100万円を出資した人は、100万円を超える責任は負いません。無限責任よりずっと楽な立場です。

合名会社と合資会社には無限責任社員がいます。とてつもなく重い責任を負いますので、無限責任社員になりたがる人はとても少ないです。戦前の財閥中枢にあった三井合名三菱合資は、鉄の結束を誇る一族だからできた会社形態です。現在、合名会社や合資会社の形態をとるのは味噌や醤油の老舗です。老舗の多くは数百年にわたり一族で経営しています。そのような場合に合名、合資の会社形態が選ばれます。

合同会社は出資者全員有限責任を負う会社です。設立と運営が株式会社より簡素ですので、外国企業が日本法人の形態としてよく用います。アマゾンジャパンシスコシステムズは合同会社です。

株式会社も出資者全員有限責任を負う会社です。日本では、会社の大多数が株式会社です。経済産業省の経済センサスによれば、会社の98%が株式会社です。
https://www.stat.go.jp/data/e-census/index.html

中小の株式会社の社長(出資者)は、自宅や土地を銀行に担保として差し出していることが多いので、実際には無限責任に近い立場に置かれています。


2 株式会社の設立

株式会社の設立のしかたには、募集設立と発起設立があります。ここでは、発起設立について説明します。

発起設立とは、設立時に発行する株式を発起人がすべて引き受けて会社をはじめることです。発起人とは、「会社をはじめよう」と言い出した人です。発起人は1人でも構いません。法人(会社など)でも構いません。「よしやろう!」と手を挙げた人🙋‍♂️が資金の全額を用意してはじめます。

資本金の規制はありませんので、1円を出資して会社を設立することもできます。ただ、実際に資本金を1円にしてしまうとで、「この会社は債権者を保護する気がないんだな」と思われ、取引に応じてくれません。少なくとも300万円くらいは用意すべきでしょう。

会社を設立するとき、定款を作成します。定款(ていかん)とは、会社の基本事項を記した会社の憲法のようなものです。具体的には、会社の商号(名前)、会社の本店所在地、発起人の氏名、設立時の出資金額、会社の目的(どんなビジネスをするのか)などを記します。

様々な事情で、会社設立を無効にしたいときは、その会社の取締役または株主が、設立後2年以内に裁判所へ訴えます。


3 株主の権利

有限責任ではあるものの、株式を保有する株主には責任があります。責任を上回る権利がなければ、株主になる人がいなくなってしまいます。株主にはどのような権利があるのでしょうか。

株主の権利には、株主個人のためである自益権と会社全体のためである共益権があります。自益権には、剰余金の配当を受ける権利などがあります。共益権には、株主総会で議案に投票することができる議決権などがあります。

株主総会の決議は多数決を原則としていますが、過半数に満たないものの、ある程度の株数を保有する人(少数株主)にも権利が与えられています。

たとえば、議決権のある株式のうち3%以上を保有する人には、会社の帳簿を閲覧する権利があります。詳しくは下のリンク先資料をご覧ください。
http://www.mofo.jp/topics/legal-updates/legal-updates/79.html


4 大会社と公開会社

会社法の用語に大会社と公開会社があります。

大会社とは、資本金5億円以上または負債額200億円以上の会社です。貸借対照表でみて、規模が一定以上の会社です。これくらいの規模になると直接、間接の取引先がかなりの数に上りますし、債権者も多くなります。それで、会社の会計をみる会計監査人を置きます。また、損益計算書を公告します。

公告は法律用語です。同じ読みの「広告」もありますが、こちらは宣伝するという意味です。公告は、法律にもとづいて、定められた事項を公にすることを意味します。決算公告は、新聞紙上や自社のホームページで行っても構いません。詳しくは下のリンク先の資料をご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji81.html

公開会社とは、譲渡制限がない株式が少しでもある会社です。回りくどい言い方ですが、要は株主総会や取締役会の決議を経ずに、自由に譲ることができる株がある会社です。証券市場に上場している会社はもれなく公開会社です。非上場会社でも、譲渡制限がない株があれば、公開会社です。

* * *

このブログでは、各科目の幹となる用語や計算問題を紹介します。細かい用語や最新の法令・規則については、テキストや問題集で確認をお願いします。